第五百七夜

 

東京方面へ高速道路を南下していると、昼前にこれから向かう先で事故渋滞の起きているとの報せが入った。

深夜からほとんど走り通しで距離は稼げていたし、期日までの猶予は十分にある。そこらのサービス・エリアで早めの昼食を摂って一眠りすれば都合がいいか。

そう思ってそのまま直近のサービス・エリアに入って車を停め、地元名産の手打ち蕎麦に舌鼓を打って車に戻り、座席の後ろのスペースで毛布に包まって目を閉じる。

仕事柄、早寝早食い早便は得意なもので、明るい中で寝るのにも慣れっこで、暫く目を閉じていれば直ぐに眠ることが出来る。

毛布の中が体温で十分に暖まり、手足の重くなってきたところで、
――カタカタカタ
と小さく乾いた音が耳に付いた。
――カタカタカタ。
近くを車が通る際の振動で車内の何かが音を立てているのかと思ったが、どうも違う。走行音の有無に関わらず、しかも一定のリズムで、
――カタカタカタ
と続く。

気になって身体を起こし、目を擦りながら音のするあたりに目を遣ると、サービスエリアの出口方面に広がる針葉樹林が青々と広がっている中に、何か白く動くものがあった。

薄汚れてぼろぼろの白装束を纏った白骨が、同じくほとんど骨だけになった扇子をひらひらと振って踊りながら、林の中をすいすいと進んで行く。

呆気にとられて眺めていると、しゃれこうべがこちらを向いて、その黒い空洞と「目が合った」かと思うと、それは綺麗に並んだ歯をカチカチと鳴らして笑い、そのまま林の奥へ消えて行く。

不思議なものを見たものだ。特に何の害を受けたのでもないから、そんな感想しか湧かないまま、改めて寝直した。

その後恙無く仕事を終えて帰宅し、風呂の準備をしながら妻にその話をすると、
「それ、知ってる。多分、狂骨とか骨女とかって妖怪じゃないかしら」
と、彼女は着替えを用意しながらにやにや笑う。

曰く、死んだ醜女が土葬された。しばらくして肉を失ってみれば意外にも
綺麗な骨をしているのに気が付いて、それを見せびらかそうと踊りを舞う化け物だという。ただし、徳の高い僧侶や神職、或いは美男子に出会うと、
「恥ずかしいのかカラカラと崩れてただの骨になるんだって」
と、徳の低い醜男の妻はカラカラと笑って夕食の支度に戻った。

そんな夢を見た。