第六百八十六夜   大学時代の友人の結婚式にて、控室で久し振りに会った友人達とお喋りをしていると、そのうちの一人の様子が気になった。お琴やお茶を習っているという彼女は大学生の頃から和装が好きで、機会があれば品良 […]
第六百六十二夜   さして大型でもない連休の最終日は生憎、一日中雨の予報だった。少なくなった食料を午前中に買い出しに出掛け、圧力鍋に適当な煮込み料理を仕込む。 冷凍食品のチャーハンと餃子を片手に、昔懐かしいテレ […]
第六百五十一夜   しとしとと春雨の降る晩、久し振りに戻ってきた肌寒さを肴に熱燗の準備をしていると、インターフォンの古臭い電子音が鳴った。水場の磨りガラスから戸の前に立つシルエットを観るに、ここの一階に住む大家 […]
第六百四十四夜   憂鬱な月曜の朝に目を覚まし、洗面台の前に身を屈めて驚いた。背中から脇腹が痛むのだ。といってもそれは学生時代によく味わっていた痛みで、恐らく病期の類ではない。筋肉痛だ。 洗顔後、簡単な朝食を摂 […]
第六百二十二夜   ネットで見付けたちょっと凝ったレシピがちょうど冷蔵庫の中身で作れることに気が付いて、少々早めに昼食の準備に取り掛かった。下拵えを終えて鍋を火に掛けて掻き混ぜると、レシピを表示させて傍らに置い […]
第六百二十一夜   「前任の方、亡くなったんですって?」。 今日初めて派遣された清掃先で、先方の警備責任者という人間が、建物の見取り図と注意事項を書いた書類、入構証と鍵束を手渡しながらそう言った。 「はあ、そう […]
第六百十七夜   夕飯の後の洗い物を終えて風呂を洗っていると、母が犬の散歩から帰ってきた。我が家では犬の散歩は交代制で、夕食後に散歩へ連れて行った者が一番風呂に入る決まりになっている。普段なら帰宅に間に合うつも […]
第六百十四夜   友人がメッセージ・アプリで、 ――ちょっとこれを見て という言葉とともに猫の画像を送ってきた。長毛種の猫が撫でろとでも言うように仰向けになって腹を見せている。 提出課題をやっつけている最中だっ […]
第六百七夜   道路脇の崖沿いに作られた小さな休憩所兼展望台の木製のベンチへ倒れ込み、手足を大の字に伸ばして仰向けになった。太腿が限界だ。友人が苦笑いをしながらストレッチをするよう促し、トイレの脇に置かれた飲み […]
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