第五百六十二夜   じゃあまた明日と皆と別れて裏口を出ると、花の金曜日の夜の街はネオン・サインもほとんど無く、往年の活気を思えば随分と寂しいものだった。 酔いの回った頭に疫病への恨み言を浮かべながら徒歩一分、ぽ […]
第五百五十八夜   夕食後、山の夜風に当たりながら酒を飲んでいて、標高が多少高いせいもあるのだろう、五月晴れの陽射しに慣れた身体が少々冷えてきた。部屋に置かれた案内書きに拠れば大浴場は夜十時まで開いているとのこ […]
第五百五十三夜   買い物袋を提げての帰宅途中、自宅まで最後の角を曲がって驚いた。自宅の前に警察車両が停まり、制服警官が交通整理を行っている。 何事かと足を速めて近付くと、ブロック塀に運送会社の大型トラックが突 […]
第五百三十三夜   風呂上がり後のあれこれを終え、いざ寝ようかというとき、お客の言葉を思い出した。 ――四角い部屋の真ん中に布団を敷き、四隅を順に見回しながら寝る。 それは、金縛りに遭う方法だという。節分に恵方 […]
第五百三十一夜   予想だにしなかった間取りに虚を突かれ、 「何ですか、これ?」 と尋ねる間の抜けた声が、家具やカーテンの無い部屋に特有の残響を残した。担当者が苦笑いを浮かべて、 「出窓、だったものです」 と錠 […]
第五百二十二夜   大掃除のついでに、この一年の間部屋に居座っていながら活躍の機会のなかった家財を整理することにした。 多くは健康グッズだが、ディスク媒体の再生機とディスク・ケースも候補に入る。私の手元に持って […]
第五百十夜   風呂上がり、バスタブの中で体を拭き、絞った髪をタオルで巻き上げて部屋着を着て洗面台を見ると、蛇口の横の眼鏡立てに眼鏡がない。 自宅で過ごす際には風呂と睡眠以外で眼鏡を外す習慣がない。だからわざわ […]
第五百四夜   管理人の趣味でカボチャやら黒猫やらの飾り付けられたエレベータ・ホールで、夕食の入った買い物袋を手持ち無沙汰に揺らしながらエレベータの降りてくるのを待っていた。 やがてエレベータの扉が開き、一歩踏 […]
第五百夜   酒類の提供が解禁され、友人と久し振りに共通の好物である沖縄料理を食べに出掛けた。 自宅でレシピを真似ても何故か再現出来なかった懐かしいあれこれの風味に舌鼓を打つうち、まだ夜も浅いのにラスト・オーダ […]
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