第百八十八夜   残業をどうにか終電に間に合わせ、人気の無いベッド・タウンの駅で降りる。 駅前の繁華街は狭く、大通りを一つ渡ると直ぐに薄暗い住宅街へ入る。一定の間隔で街頭が立ってはいるがその間隔は疎らで、蛍光灯 […]
第百八十夜   昼寝から目が覚めて伸びをすると、首元でチリンと耳に刺さる金属音がする。おやと思って俯くとまたチリンと鳴るが、視界に入る限り何もない。どうやら首輪の下に鈴が付けられているらしい。 音に気付いた同居 […]
第百七十五夜   夏の終わりに女子会でもと、大学の友人四人で集まって酒宴を開いた。   ちょうどテレビで心霊番組が流れていたので、いかにも合成臭いとか、出演者の怖がり方がわざとらしいとか、今のはよく出来た話だと […]
第百七十三夜   麻雀に誘われて友人宅へ招かれた。彼のアパートへは初めて訪ねるのだが、スマート・フォンへ送られてきた地図情報のお陰で特に迷うこともない。便利な世の中になったものだ。 酒とツマミの入ったレジ袋を片 […]
第百六十九夜   社会人二年目、学生時代の友人達ともやや疎遠になったが、かといって新たに友人関係が構築されるわけでもない。折からの猛暑に郷里の夏の暑さはもう幾らかマシだったかと懐かしみ、冷房代の浮く分で学生時代 […]
第百五十九夜   客が出ていったのを見計らって押し入れから出、分厚い樫の一枚板の卓の前の座布団の下を探って、平べったい板を取り出す。 昨日から宿泊している夫婦の、旦那のものを忘れて行かせたのである。何やら写真を […]
第百五十三夜   「この間、変なものを見ちゃってさ……」 と、半ば空いたビールのグラスを片手に友人が苦笑いを浮かべる。何の話だと水を向ける私に、 「本当に変な話なんだが……」 と前置きして彼は話し始める。 大型 […]
第百五十一夜   日課のジョギングへ出ようと寝間着からジャージに着替えて家を出る。毎朝同じ時刻に家を出るのだが、夏至も近くなって随分と明るくなったのがわかる。気温も高く走っていて負担に感じ始めたので、もう少し時 […]
第百四十八夜   公園の水飲み場に溜まった水で行水をしていると、フィヨフィヨフィヨと聞き慣れぬ声がする。 嘴で翼の羽根を梳かしながらチラと見ると、ここらではあまり見ない、茶色い斑の鳥が降りてきた。冠のような飾り […]
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