第四百九十七夜

 

郊外へ引っ越しをした晩、最低限の衣服、寝具と風呂、トイレ周りの荷解きとを終わらせたところで疲れ果て、見慣れぬ風呂場で汗を流した後直ぐ、居間に広げた布団に親子三人久し振りに川の字になると、目を閉じたそばから眠りに落ちた。

それからどれほど経ったろうか、何かゴソゴソと音のするのが聞こえて目が覚めた。横を見れば妻が先に目を覚ましていたらしく、目を動かして異音は足元の方からと教えてくれる。

身体を起こして部屋の隅に目を凝らす。積み重なったダンボール箱の辺りから、確かにガサゴソ、或いはカリカリと音がする。次第に闇に目が慣れると緊張はそのままに恐怖心だけが薄れ、黙って見ていても仕方がないと原因究明の好奇心と問題解決のための使命感が湧いてくる。

寝ている息子はどうせ朝まで梃子でも起きぬから、慣れないスイッチまで歩いて灯を点け、今度は明るさに目が慣れるのを少しだけ待ち、件のダンボール箱の小山へ歩み寄る。

と、音どころか箱の側面が振動して音のするのが見て取れる。備蓄したインスタント食品の類を此方に来てすぐに食べられるようにとまとめた箱で、結局店屋物を頼んだために今日のところは出番がなく、今は洗面具一式を取り出した後の箱の下に積まれている。

意を決して上に乗った箱を退け、止めぬまま蓋をしただけのそれを開けると、耳を後ろへ伏せ、目を怒らせた三毛猫が、蛇のように音になるかならないかの気を鋭く吐いて此方を睨む。

トラックでか家の中でか知らないが、荷を下ろして運び込む際の僅かな隙に忍び込んだものだろう。妻に報告すると、喜び勇んでスマートフォンを取り出して撮影を試みるが、なかなかかわいい顔をしてくれぬといってしょげた顔をする。

そんなことより、もし子育ての最中で放ったらかしの子でもいれば大事だと彼女を止め、掃き出し窓からダンボールを庭に移す。気付いてやれずに申し訳ないと一言謝って部屋に戻ると案の定、息子は一人鼾を掻いて眠っていた。

そんな夢を見た。