第五百二十二夜

 

大掃除のついでに、この一年の間部屋に居座っていながら活躍の機会のなかった家財を整理することにした。

多くは健康グッズだが、ディスク媒体の再生機とディスク・ケースも候補に入る。私の手元に持っているような名作は大概がネット配信でいつでも見られるようになってしまったから、希少なものだけ残して捨ててしまってもいいかもしれない。

ディスク・トレイの空なのを確認して配線を外して束ね、他の二軍落ち勢と一緒に納戸代わりの押入れの前へ並べる。

さて、ここからが一仕事だ。何しろ押入れで寿司詰めになっている二軍達に、戦力外通告をしなければならない。

まだ使える、勿体ない、ひょっとしたら使うかも、と次々に鎌首をもたげるもったいないお化けをどうにか振り払いながら、昨年来全く押し入れから出る機会のなかったものを取り出して空きを作っては、そこに今年の二軍落ちを収める。

荷物が粗方片付いて、奥からコンパクト・ディスクのコンポが出て来た。今となっては懐かしい代物だが、これももう映画以上に、手元にディスク媒体を置いておく意味の薄い物となってしまった。若い頃の収集趣味で揃えたコレクションを除いて、もう捨てるか売るかしてしまおうか。

意を決してコンポを居間へ運び出し、念の為に電源を入れて中にディスクの入っていないかを確認すると、曲数と収録時間とが液晶画面に表示されて首をひねる。色々と細かい性格で、片付けぬまま仕舞い込むようなことはしない質なのだ。

しかしまあ、現にディスクが入れっぱなしになっているのは事実だ。何のディスクが入っているかを確かめようとイジェクト・ボタンを押す。が、小さなモータ音の後、ガチャガチャと何かの部品のぶつかるような音がして、一枚のディスクを乗せたトレイが排出される。

それを見て思い出した。

このコンポは私と音楽の趣味が合わなかったらしい。

当時、目覚ましにハードロック・バンドのディスクをタイマで流していたのだが時折、何かの雑誌の付録だったクラシックのディスクが入っていることがあったのだ。

侵入者でもあるのかと警察に通報してもコンポの中のディスクが取り替えられているというだけでは取り合って貰えなかった。実際それ以外に変わったことも起こらず、何週間かに一度位の頻度で忘れた頃にオーケストラで起こされる他に害はなかったから、きっとこのコンポのお気に入りなのだろうと思ってそのまま使い続けた。

そんなことを思い出すと、どうもそのまま捨ててしまうのも可哀想になり、大掃除の間だけそのディスクを再生してやることにした。

そんな夢を見た。

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