第七十二夜   大学の夏休みは長過ぎる。そんな時間を持て余した学生達が集まる大学のサークル室で、時折雑談を交わしながら、あるものは勉強をし、またあるものは代々伝えられてきた漫画を読み、ゲームに興じている。 盆に […]
第七十一夜   同じマンションに住む同級の友人と部活の早朝練習へ行くのに、一階のロビィで待ち合わせた。ふと玄関の外を見れば、午前六時の空は夏休み中のそれに比べて紫がかって見える。 陽の昇るのが遅くなってきたと言 […]
第七十夜 残暑の厳しい中、秋葉原の電気街で買い物をした。先日の落雷で職場のコンピュータが壊れ、部品の購入を任されたのである。 用事を済ませ一休みしようと公園へ入ると、平日の昼とはいえ妙に人気の無いのが気になる。木陰の長椅 […]
第六十九夜 事務所で机に向かいカタカタとキィ・ボードを打っていると、「こんにちはー」と語尾の間延びした大声とともに長い茶髪の女性が入ってくる。 仕事上の知り合いで、まだ若いのにこれでもかと派手な服装と化粧をしていることも […]
第六十八夜 運動不足を解消するのに、少々高い自転車を買った。道具を用意したのはいいのだが、元来が運動不足になるような出不精だ。単に運動のため出掛けるのが億劫なのは言わずもがなである。そこで一念発起して、休日には手頃な観光 […]
第六十七夜 「で、相談って何です?」 頼んだ料理が揃って乾杯し、グラスのビールを一口呑んで若い男が問う。卓の向かいには高級なスーツに身を包んだ四十絡みの紳士が土気色の顔をしてグラスをあおっている。グイグイとグラスを空け、 […]
  第六十六夜 盆に帰省をしないならと誘われて、日の暮れた頃に酒と肴を持ち寄り酒宴を開くことになった。 友人宅へ着くと、 「遅かったじゃないか」 と出迎える部屋の主の顔は既に赤い。家が遠いのだからと返しながら靴を脱ぎ、酒 […]
第六十五夜 合宿初日に興奮で寝付かれぬ後輩たちにせがまれて、消灯時間を過ぎた中、キャンプ用にロウソクの灯の色を真似たLEDランタンをこっそり囲んでトランプ遊びをすることになった。三年が引退して部内では最上級生になったもの […]
第六十四夜 「不思議なことってのは、あるもんなんだなぁ……」 と、乾杯のビールを一口飲んだSEの友人が切り出した。 一ヶ月ほど前に彼の引っ越しを手伝った際に、相場より随分と家賃の安い物件を見つけたのだと喜々として語ってい […]
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