第百八十二夜   夫が週末に出掛けるというので、いつもより多めの食料を買い込んで車に積んだ。ほんの数キログラムの差だろうが、アクセルもブレーキも若干聞き難いような気がするから不思議なものだ。 大通りを折れて自宅 […]
第百八十一夜   仕事を終えて帰宅し、レジ袋から酒とツマミを取り出して座卓に広げる。 独り酒に静寂は心がささくれるのでテレビを点ける。何が見たいというのではないが、恐怖映像特集とやらを見つけ、まだまだ厳しい残暑 […]
第百八十夜   昼寝から目が覚めて伸びをすると、首元でチリンと耳に刺さる金属音がする。おやと思って俯くとまたチリンと鳴るが、視界に入る限り何もない。どうやら首輪の下に鈴が付けられているらしい。 音に気付いた同居 […]
第百七十九夜   幾らか秋めいて涼しくなった夜風に吹かれながら、今しがた見終わった映画のディスクを手に、幹線道路の脇の歩道を歩く。 週末はレンタル・ビデオ店で古い映画を借りて酒を飲む。学生時代に付いた習慣で、社 […]
第百七十八夜   アルバイト先のカラオケ店へ着くなり、バックヤードで店長から、 「例の部屋、大掃除するから着替えたら来い」 と言われて気が重くなる。 今年の春先から異臭のする部屋があり、利用客から人死が出ている […]
第百七十七夜   畑仕事を終え、木陰で弁当を広げようとしてうっかり握り飯を落としてしまった。握り飯は雑木林の斜面をころころと転がり落ちたかと思うと、不意に視界から消える。 土まみれになったそれを食う気はないが、 […]
第百五十一夜   残業をしていると、携帯電話に友人から、 「家に帰りたくない」 と連絡が入った。三ヶ月ほど前に挙式したばかりの男の台詞ではない。 「自分にそういう趣味はない」 と返すと、話だけでも聞いてくれと食 […]
第百七十五夜   夏の終わりに女子会でもと、大学の友人四人で集まって酒宴を開いた。   ちょうどテレビで心霊番組が流れていたので、いかにも合成臭いとか、出演者の怖がり方がわざとらしいとか、今のはよく出来た話だと […]
第百七十四夜   夏の終わりにシーズンをやや外れて安くなった学生向けのプランを利用した旅行を友人から提案され、なんとか金と時間の都合を付けて参加することになった。 しかし、ターミナル駅の高速バス乗り場へ早朝に付 […]
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