第二百六十一夜   締め切った雨戸を打つ雨粒の音を聞きながら、普段呑まぬ芋焼酎を片手に普段見ない古い邦画を眺めていた。 母方の祖父母が週末を旅行して家を空けるので、その留守番役として白羽の矢が立ったのだ。いつ建 […]
第百八十一夜   トイレから戻ってきた年配の上司が、手術前の外科医のように胸の前に両手を上げながら、椅子の背もたれに掛けた上着のポケットからハンカチを出してくれと言う。 中腰になって向かいの席に手を伸ばし失礼し […]
第二百五十九夜   目を覚ますと下腹に、痛みに近い尿意を覚えた。 寝る前に用は済ませたのだが、こればかりは仕方がない。小学生の中学年頃から数日に一度はこうして尿意で目を覚ますようになってもう数年経つ。 睡魔の押 […]
第百八十一夜   事務所で机に向かいカタカタとキィ・ボードを打っていると、「こんにちはー」と語尾の間延びした大声とともに長い茶髪を襟足で一つに縛った女性が入ってくる。 仕事上の知り合いで、まだ若いのにこれでもか […]
第二百五十七夜   土曜の夕方、ゼミの先輩のアパートに男六人が酒とツマミを持って集まった。 雷と窓を叩く雨音を聞きながら麻雀を打ち続け、気付くと雨が小康状態になっている。テレビのニュースが引き続き雷雲の西から湧 […]
第二百五十六夜   地元だからと案内を頼まれ、ゼミの友人と二人して、最寄り駅から近所の神社へ並んで歩く。 古くから門前町として栄えた地域だが、ここ数年は外国人観光客が急増した。季節によっては、昼のあいだ平日と言 […]
第二百五十五夜   シュ……シュ……シュ 背後の荷台から断続的に、何かの擦れるような、或いは空気の漏れるような音が聞こえた。 「固定が甘かったんですかね。一度見てみましょうか」 と運転席を見ると、酒焼けした声が […]
第二百五十四夜   出張から返ってきた夫が息子に飛行機の模型を渡すと、彼は早速居間のソファで箱を開け、夢中で組み立て始めた。 それを横目に寝室へ向かい、背広を脱いでクローゼットに掛けた夫が、 「そういえば、行き […]
第百八十一夜   顧問の先生が 「全員が終わったら、部長は報告に来い。そのまま解散でいい」 と言って姿が見えなくなるとすぐ、出されたメニュの半分も終わらないうちに投げ出した先輩の一人が、 「なあ、お前らは幽霊っ […]
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