第二百二十七夜   フクロウの石像を背に立って文庫本を開きゼミの友人を待っていると、 ――チリリ、チリリ 周囲の喧騒の中で妙に目立つ鈴の音に気付いた。声量は大きくないのによく通る声というものがあるのと同じような […]
第二百二十六夜   語学の授業が終わった後、ここのところ元気のなかった友人から、学食で昼食でもどうかと誘われてついて行くことにした。 暫く前には引っ越しをしたいが費用がないと嘆いと言ってやけに暗い顔をしていたの […]
第二百二十五夜   暇に任せてカウンタの裏に出した椅子に座って雑誌を読んでいると、店の外からLEDの強い光が目を刺した。駐車場に目を遣ると、見慣れぬ銀色の乗用車が入ってくるのが見える。 椅子と雑誌を事務所へ片付 […]
第二百二十四夜   雨が降って少なかった客も帰ってこれ以上の客も来なかろうと、少々早いが店仕舞いを始めた。 夜食用に水を張った小鍋を火に掛け、レジスタを開けて有線放送を聞きながら札を数えて纏める。 紙幣を片付け […]
第二百二十三夜   一人暮らしの休日の夜のお供にと、近所で映画を借りてきた。わざわざ寒い中を出掛けなくてもネットの配信サービスを使えば好さそうなものだが、同じような夜の過ごし方をする同士が多いためか、この時間は […]
第二百二十二夜   通勤電車の乗り換えに歩くコートの肩を背後から叩かれ、知り合いかと思い振り返ると、らくだ色のコートにシルクのマフラーをした初老の紳士が、いたずらを咎められた犬のような目で私を見ていた。 全く見 […]
第二百二十一夜   軽トラックの助手席で、ドア・ポケットの上の手摺に頬杖を着いて、流れて行く窓外のの景色を眺める。 友人が引っ越しを手伝えと言うので夜の鍋を報酬に引き受けたのは良いが、もう三度目の復路で、流石に […]
第二百二十夜   朝が弱いので、朝食は茹卵、ブロッコリと餡パンを珈琲で流し込むのが、自炊に手を抜く用になってからの定番となっている。 茹卵もブロッコリも日曜の夜に一週間分を茹で、冷蔵庫に入れておく。餡パンはクル […]
第二百十九夜   カメラに三脚を持参して、近所の沼にやってきた。越冬に渡ってくる鳥を撮ろうという算段だったが、どういうわけか今日はどこにも姿が見えない。昨年の今頃は、沼の水草を喰むもの、魚を器用に捕らえるものな […]
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