第七百七十七夜    同僚が右目に眼帯をして出勤をするようになって二週間が経った。始めは特に気にしてもいなかったのだが、モノモライというのはこんなに長引くものだったろうかと気になって、昼休みの暇に、 「目は、ま […]
第七百七十六夜    目が覚めると低く唸る機械音と床の揺れに辺りを見回し、直ぐに自分が船に乗っていることを思い出した。仕事で飛行場の無い離島へ一晩掛けて向かうフェリーの中、雑魚寝で床に押し付けられていた側の尻や […]
第七百七十五夜   「よし、それじゃあ皆で美味しいカレーを作って、お母さん達をびっくりさせよう!」 と張りのある声が炊事場に響いて、私を含む五人の子供達が事前に割り振られた仕事を始める。私はカレーの担当で、当面 […]
第七百七十四夜    先生が教室に入ってくるまで数分の時間潰しのつもりで朝読書に持参した本を読んでいると、しばらく熱中したところで引き戸が開いて先生が入ってきた。顔を上げるとジャージ姿の先生の上の壁掛け時計はい […]
第七百七十三夜    たまの休日に夏物の服を買い込んだ帰り、大きな紙袋を抱えてそのまま帰宅するのも味気なく、ちょっと休憩しようかと喫茶店に立ち寄った。レジでカロリの塊のような飲み物を頼み、小さなトレイに載せて出 […]
第七百七十二夜    部活帰り、へとへとの友人達と歩く商店街には香辛料の香りが漂っていた。最終下校後の帰り道も、五月も末が近づいて随分と明るくなったものだと季節の巡る早さに驚く。もうすぐ高校最後の地方大会が本番 […]
第七百七十一夜    とある月末、今年度になって転属してきた同僚と二人で小さな事務所の一室で黙々と作業をこなしていると、不意に同僚が、 「ん?」 と小さく鼻から声を出した。彼女は私と違い、普段、作業中に独り言を […]
第七百七十夜    友人と映画を見た後、一緒に甘いものを突付きながら一頻り感想を話し合った。映画の話題も尽き、紅茶も冷めきったところで友人がトイレに席を立ち、こちらもぼちぼち退店の準備をしようかと荷物をまとめ始 […]
第七百六十九夜   「お姉ちゃん大変!」 と、スマート・フォンの室の悪いスピーカから子供の金切り声が半ば音割れして鼓膜を刺した。小学生らしく朝からテンションが高いと評するべきか、自分も兄も割と子供の頃から朝は弱 […]
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