第五百四十三夜   ハンカチで手を拭きながらトイレから出て売店を見ると、結構な人数が並んでいた。トイレでも少々時間を食ったものの、まだ多少の余裕はある。遅くとも本編前の広告の途中では戻れるだろう。 スマート・フ […]
第五百四十二夜   マニュアル通りに本社への連絡等を終え漸く一心地着いて珈琲を淹れ、傍らの警官達に一杯どうかと勧めると案の定「勤務中だから」と断られた。 案の定というのは、私が彼等の元同業者だからのことで、彼等 […]
第五百四十一夜   折角の休日だというのに寝覚めの悪い朝だった。十年ほど前に老衰で死んだ犬が夢に出たのだ。いや、ただ夢に出るだけならば何の問題もないどころか、内容に依っては嬉しいくらいのことなのだが、内容がよろ […]
第五百四十夜   「ようやく春らしい陽気に恵まれるでしょう」との気象予報士の言葉を信じ、朝食を済ませて直ぐ一週間の洗濯物をやっつけてベランダに干すと、ここのところ続く窮屈な日常の息抜きにとドライブに出掛けた。 […]
第五百三十九夜   早番の勤務を終える十分前、いつも通りに遅番の者とフロント業務の引き継ぎをしていると、その脇で電話が鳴った。 その呼び出し音の音色でそれが内線だとわかり、最も子機に近い私が反射的に受話器を取る […]
第五百三十八夜   日付の変わる十分前、いつも通りに夜勤の者とフロント業務の引き継ぎをしていると、その脇で電話が鳴った。 その呼び出し音の音色でそれが内線だとわかり、最も子機に近い私が反射的に受話器を取る。本体 […]
第五百三十七夜   スマート・フォンから試験時間の終了を知らせるタイマが鳴って、椅子の上で両拳を突き上げて背筋を伸ばした。塾の先生からは時間を掛け過ぎずに解けるようになれば高得点を狙えるのでその練習をしろと言わ […]
第五百三十六夜   晩酌をしながらだらだらとネット配信のニュースを見ていると、動画配信サービスで冬場の恐怖映画特集なるものが開催されているとの広告が目に入った。 酔いが回る前にシャワを浴び、食卓兼万年床の炬燵に […]
第五百三十五夜   混雑した列車を避けて退社を遅らせると、最寄り駅前の量販店で出来合いの惣菜を見繕って家路に着いたのは午後十時の少し前だった。 定時あたりで退社をすると帰りの電車が随分と混み合うようになってきて […]
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