第五百六十一夜   帰宅途中に引っかかった信号が青に変わって歩き出そうとして出鼻を挫かれた。顔面、左目の少し下に何かが当たったのだ。 春になって虫でも飛び回っているのかと思うと同時に植え込み近くで何か金属音が鳴 […]
第五百六十夜   二年に上がって初めて教室に入って以来、不思議に思っていることがあった。他の学校、他の地域ではどうかわからないが、私の卒業した小学校では各教室にオルガンが置かれていた。中学に上がるとそれが無くな […]
第五百五十九夜   昼食のスパゲッティとレトルトのソースとを二つの鍋で茹でながら、傍らの冷蔵庫の側面に貼り付けたタブレットで映画を見ていると、居間でスマートフォンが鳴った。メッセージ・アプリの通話要求の効果音だ […]
第五百五十八夜   夕食後、山の夜風に当たりながら酒を飲んでいて、標高が多少高いせいもあるのだろう、五月晴れの陽射しに慣れた身体が少々冷えてきた。部屋に置かれた案内書きに拠れば大浴場は夜十時まで開いているとのこ […]
第五百五十七夜   テレワークを終えて五時半を回った頃、娘と並んで自転車に乗って近所の量販店へ買い物に出掛けた。いつの間にか随分と陽が長くなったもので、辺りはまだ夕焼けにもならずに明るいままだ。 駅前へ向かうに […]
第五百五十六夜   季節外れの台風が直撃するとの予報が出て、今日は朝から倉庫やらの風害対策をし、仕事は日暮れ前に引き上げることになった。 台風から続く雲が長雨を降らせる中をちょうど子供達が下校中で、色鮮やかな傘 […]
第五百五十五夜   仕事帰り、電車を降りて歩きだすと、今日は妙に身体が重かった。普段なら食費の節約になる程度には簡単な自炊もするのだが、こういう日は多少贅沢でもして鋭気を養いたい。まだ時間が早いので一旦帰宅して […]
第五百五十四夜   憂鬱な月曜の朝の事務所にて、珈琲を淹れて席に戻ると始業までまだ十分程の時間があった。普段なら周囲と雑談でもしながらニュース・チェックをするのだが、右手の座席に座る同僚を見てすっかり興味がそち […]
第五百五十三夜   買い物袋を提げての帰宅途中、自宅まで最後の角を曲がって驚いた。自宅の前に警察車両が停まり、制服警官が交通整理を行っている。 何事かと足を速めて近付くと、ブロック塀に運送会社の大型トラックが突 […]
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