第百四十九夜   昼の山道を登り、途中の展望台に車を停める。トイレにでも行き、その横に設置されている自動販売機で飲み物でも買おうかと車を降りる。 ここからは市街地が一望でき、特に夜景が美しいとしてデートにはうっ […]
第百四十五夜   塩を振った馬刺しの強い旨味をアテに芋焼酎を飲んでいると、上司が「ちょっと失礼」と言ってスマート・フォンを取り出す。 奥方への連絡でも忘れていたのだろうと皆少しだけ声を抑えつつ各々の会話を続ける […]
第百四十一夜   健康だけが取り柄の私が突然の腹痛に襲われて病院に担ぎ込まれ、痛みに悶ているうちにあれよあれよと事が進んで、いつの間にやら手術が終わって入院という運びとなった日のことである。その晩、これまで入院 […]
第百三十六夜   畳の部屋の中央に据えられた丸い卓袱台には簡単な朝餉が載せられ、見知らぬ一家が忙しくも楽しげに箸を動かしている。 それをガラスのあちらに歪んだ形で眼下に眺める私は、どうやら神棚に置かれているらし […]
第百二十九夜   コンビニエンス・ストアで晩酌のツマミを買った帰り、風もなく温かい夜で気分がよく、夜桜でも眺めようかと近所の公園へ足を伸ばした。 地元ではちょっとした大きさの公園だが、花見客が集まるほど桜が植わ […]
第百二十四夜   塾の居残りで遅くなり、久し振りに独り夜道を歩くことになった。 ベッド・タウンの繁華街は狭く、二分も歩けばそこはもう人通りの少ない住宅街で、大通りから折れ、疎らな街灯がぽつりぽつりとアスファルト […]
第百二十二夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の […]
第百二十一夜   週末というのにモヤモヤと気の晴れぬためか、洗濯を済ませたあと買い物を車に積んでの帰り道、ふとハンドルを切って山へ向かうことにした。ラジオのDJが庭の梅にメジロが来たと話すのを聴いて羨ましく思っ […]
第百十二夜   積まれた雪の融け残る住宅街の夜道を歩いていると、 「すいません、はい、どうも、ええ」 と、男の大きな声が響いた。相手の声の聞こえないことから推して、携帯電話で話しているのだろう。 振り向いても人 […]
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