第百八十九夜   大学のサークルで参加したイベントの後片付けに手間取って、終電を逃した。 しかし、家の近い友人を持つ者も少なくなく、始発の動き始めるまで居場所の無いのは私を含め五人で、駅から近い二十四時間営業の […]
第百七十一夜   母に頼まれた街での買い物を終えて実家へ戻る田舎道を走っていると、盆も終わりとなって幾らか涼しくなった風が窓から入って髪を揺らす。都会と違いすれ違う車も少なく、空気も綺麗だ。 走っているうちに、 […]
第百六十四夜   社用車を走らせて夏の夕暮れの住宅街からの帰り道、もう午後も七時を回ったというのに空は朱に染まって、通りもまだ明るい。 薄暮。黄昏時ともいう。 こういう中を運転していると、教習所で脅しのように言 […]
第百六十三夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の […]
第百六十二夜   濡れタオルを頭に載せながら昼食休憩を炎天下の公園でとった後、木陰のベンチに腰掛けたまま噴水を眺めながら呆けている。南海上から押し寄せた水蒸気は九州から岐阜の辺りにまで豪雨をもたらして力尽き、関 […]
第百六十一夜   暑くなる前にと午前中に買い物を済ませたものの、強い日差しと湿度の高い空気のために、帰宅したときにはシャツを絞れるくらい汗をかいていた。 居間の冷房を付け、生鮮食品だけ冷蔵庫へ放り込んでから服を […]
第百五十三夜   「この間、変なものを見ちゃってさ……」 と、半ば空いたビールのグラスを片手に友人が苦笑いを浮かべる。何の話だと水を向ける私に、 「本当に変な話なんだが……」 と前置きして彼は話し始める。 大型 […]
第百五十一夜   午前中の外回りに区切りが付いて、どこかで昼食をと思いながら社用車に乗り込む。 曲がりくねった道を抜けて郊外の幹線道路へ出て、白いセダンの後に付いて走る。この手の道沿いには広い駐車場を備えたファ […]
第百四十七夜   買い物へ出掛けて都内のターミナル駅で乗り換えようと長い階段を登ると、スーツ姿のまだ似合わぬ若い女性がホームの端に腰掛けている。 しかし、混み合ったホームの中で彼女に注目しているのは多くないよう […]
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