第百二十四夜   塾の居残りで遅くなり、久し振りに独り夜道を歩くことになった。 ベッド・タウンの繁華街は狭く、二分も歩けばそこはもう人通りの少ない住宅街で、大通りから折れ、疎らな街灯がぽつりぽつりとアスファルト […]
第百二十一夜   久し振りの陽気に誘われて、買い物袋を提げながら川岸の遊歩道を歩く。普段なら駅から直ぐに自宅へ向かうのだが、ちょっと脇道へ入れば川沿いに出て、しばらく下流へ向かった先でまた脇道から自宅へ戻ること […]
第百二十二夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の […]
第百七夜   「どうする?」 という友人の声が冴えた堂に響き、破れた戸から冬山の闇の雨音の中へ吸い込まれてゆく。 「どうすると言っても……」 灯は堂を朧げに照らすこのガス・ランタンに、LEDの小さな懐中電灯しか […]
第百一夜   買い出しから帰ると、妹が馬面になっていた。 と言っても、極端に面長になっていたという意味ではない。文字通り、首から上が馬のものになっていたのである。クリスマス用にパーティ・グッズでも買ってきてから […]
第九十四夜   学生街のアパートへ、酒と肴の入ったビニル袋を提げて友人を尋ねた。 キャンパスにほど近い都内の一等地に有りながら破格の家賃で、貧乏学生には有り難いのだそうだ。 大学へも駅へも徒歩二分など羨ましい限 […]
第九十二夜   川へ釣り糸でも垂らそうかと思い立ち、始発から電車を乗り継いで山の中の駅へ降りた。改札を出ると小さな駅舎の前を通る細い舗装路があって、そこを五分も歩けば川岸へ下りるコンクリート製の階段があって、釣 […]
第八十一夜   いつもの公園のいつものベンチに腰を下ろし、冷凍食品を詰め込んだだけの小さな弁当箱を膝に載せて噴水を眺める。 久し振りの秋晴れの昼休みに味わう、ささやかな贅沢である。 小さな弁当箱はすぐに空になる […]
第八十二夜   トルコ人の友人がケバブの屋台を手伝えと連絡をしてきたのは昨夜のことだった。気温の急変にやられて風邪を引いた相棒の代わりに、接客だけしてくれればというので軽い気持ちで引き受けた。 朝から秋葉原、上 […]
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