第六百八十七夜   会社の都合で少々早めに取らされた盆休みの昼下がり、大荷物を抱えて電車を降りて昔懐かしい道を辿った。マンションのエレベータ・ホールへ着く頃にはすっかり汗まみれだ。呼び出しボタンを押して鞄からタ […]
第六百八十六夜   大学時代の友人の結婚式にて、控室で久し振りに会った友人達とお喋りをしていると、そのうちの一人の様子が気になった。お琴やお茶を習っているという彼女は大学生の頃から和装が好きで、機会があれば品良 […]
第六百八十五夜   始業前、同僚達と上司の心配をしながら仕事の準備をしていると、噂をすれば影、珍しく汗まみれの上司が肩で息をしながらやってきた。普段ならもう三十分は早くやってきて、涼しい顔で部下を迎えるのが通例 […]
第六百八十四夜   焚き火で沸かした湯で珈琲を淹れながら同じ湯で濡らしたタオルで顔を拭いていると、薪を拾いに行っていた友人二人が戻ってきた。両腕には虎ロープで束ねた茶色く枯れた笹や杉の小枝を抱えている。炭に火を […]
第六百八十三夜   期末試験が終わって夏休みまでの準備期間のような朝、高校の最寄り駅からの通学路を歩いていると後ろから自転車でやってきた級友に声を掛けられた。 振り向いて挨拶を返すと彼は汗だくの顔に妙に清々しい […]
第六百八十二夜   知人の紹介で隣県から初めて受けた依頼の打ち合わせに初めて行った帰り道、少々悩んだ末に海岸沿いの遠回りではなく、行きに通った山中の最短ルートを戻ることにした。夏至から間もないから日が落ちるまで […]
第六百八十一夜   夕立の気配のしてきた空を眺めながら家の中へ早く支度をして出てくるように声を掛けると、両手に荷物を持った娘がバタバタとやってきて助手席に乗り込んだ。 後に続いて運転席に座ると、彼女は膝に乗せた […]
第六百八十夜   うだるような夏の午後、いつも通り閑古鳥の鳴く店内でお手製のかき氷をスプーンで突付いていると、硝子の棒の触れ合う涼やかな音が店内に響いた。戸外の熱気と共に店へ入ってきたのは体格の良い短髪の男性で […]
第六百七十九夜   陽が暮れてなお蒸し暑い中を帰宅し、郵便受けの中身を確認してゾッとした。チラシの類に紛れて一枚、見覚えのある葉書が見えたのだ。 昼の熱気を蓄えて蒸し暑い部屋に入り、荷物を置いて冷房を掛けてから […]
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