第七百十三夜

 

昼休みの休憩に入ってPCをスリープさせ、昼食は何が好いかと隣の息子に尋ねる。インフルエンザのために学級どころか学年閉鎖となり、タブレットに送られてきた課題をサボらぬよう隣に座らせていたのだ。

手間のかからぬラーメンを希望され、鍋に湯を沸かし、トッピングを用意する脇で息子がちょろちょろと動き回って食器を用意してくれる。

湯の沸くのを手持ち無沙汰に待つ息子が、誰かの名前を挙げて、
「お母さん、知ってる?」
と尋ねる。どこかで聞いたことのある響きだが、苗字を尋ねて思い出した。息子が幼稚園に通っている頃、車に撥ねられて亡くなったお子さんの名前だ。
「どうして急に?」
と尋ねながらナルト代わりの蒲鉾を切る。息子は鍋を見詰めたまま、
「それがさ、九月から引っ越してきて、今一緒のクラスなんだよね」
と呟く。いやいや、息子は小さくて覚えていないかもしれないが、私が息子を連れてお通夜に行ったのだ。

そう告げると息子もそれは覚えている、それどころか、
「幼稚園で一緒だった子達も、お葬式かお通夜かわからないけど覚えてるって言うんだよね」
と首を撚る。続いて、
「本人に『死んだんじゃなかったか』なんて聞けないから、『同じ幼稚園だったよね』って聞いた奴がいるんだけど、お父さんの仕事の都合で引っ越して、五年ぶりに戻ってきたって言うんだってさ」
とこちらを見て、
「でもお母さんも覚えてるんだもんだなぁ」
と溜め息を付き、鍋に麺をほぐし入れて菜箸でかき回し始めた。

そんな夢を見た。

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