第二百七十四夜   半年ぶりに母と二人並んで夕飯の食器類を片付け終え、マグカップを片手に廊下へ出て居間へ向かう。 避難勧告も出ていないとは言え、横殴りの雨の雨戸を叩く音は聞いていて心地の良いものではない。台風の […]
第二百七十三夜   久々に両親を喜ばせてやろうと、盆に帰郷する旨を連絡したのが却って気を遣わせることになった。最寄り駅のロータリィへ車で迎えに来ると父が言い出した。大した距離でもないからと言っても聞かないので、 […]
第二百七十二夜   質の良いものが多少売れてしまうのは諦めて、陽が傾いてから家を出て買い物に向かったが、皆考えることは同じなのか棚の商品は時間の割に減っていなかった。 数日分の野菜や魚を買い込んで店を出ると西の […]
第二百七十一夜   今年から移った勤め先の最寄り駅の近くに、常連とは言わないが月に数度呑みに行くようになったバーが有る。 落ち着いた雰囲気ながら気障でも成金趣味でもない、かといって垢抜けず貧乏臭さもない不思議な […]
第二百七十夜   合宿一日目は怒涛のうちに夜になった。 早朝に集合した後、倉庫から非常時用の薄い敷布団を屋上へ運び出して干し、家庭科室で昼食を作りながら器具の扱いやゴミの処理など衛生管理の説明を受けた。午前の練 […]
第百八十一夜   昼食を終えると自転車に飛び乗り、友人宅を数件回って市営プールへと向かった。泳げない者に指導をするという名目で、最も暑い時間帯を水辺で涼もうという算段だ。まだ正午を過ぎて間もないが、頭の真上から […]
第二百六十八夜   朝、気温の高くなる前に仕事を済ませてしまおうと、春野菜の収穫を終えた畑に秋蕎麦の種を蒔いていた。朝飯時には仕事も終わり、荷物を纏めて帰り支度をしていると、畦道を水色の軽自動車が一台こちらへ駆 […]
第二百六十七夜   腕を怪我した友人に頼まれて、臨時に酒の配送を手伝うことになった。彼を助手席に乗せて指示に従って運転し、彼の御用聞きをしている間に荷運びをする。 初め運転を任せては効率が悪いから彼がやると言っ […]
第二百六十六夜   夜勤明けのそろそろ眠たい頭でコインランドリィから部屋に返ってくると、生暖かい空気がじっとりと出迎えてくれる。湿度はさほど外と変わらないのに、不思議と温度は籠もる。 かといって冬場は何処からと […]
最近の投稿
アーカイブ