第二百五十六夜   地元だからと案内を頼まれ、ゼミの友人と二人して、最寄り駅から近所の神社へ並んで歩く。 古くから門前町として栄えた地域だが、ここ数年は外国人観光客が急増した。季節によっては、昼のあいだ平日と言 […]
第二百五十五夜   シュ……シュ……シュ 背後の荷台から断続的に、何かの擦れるような、或いは空気の漏れるような音が聞こえた。 「固定が甘かったんですかね。一度見てみましょうか」 と運転席を見ると、酒焼けした声が […]
第二百五十四夜   出張から返ってきた夫が息子に飛行機の模型を渡すと、彼は早速居間のソファで箱を開け、夢中で組み立て始めた。 それを横目に寝室へ向かい、背広を脱いでクローゼットに掛けた夫が、 「そういえば、行き […]
第百八十一夜   顧問の先生が 「全員が終わったら、部長は報告に来い。そのまま解散でいい」 と言って姿が見えなくなるとすぐ、出されたメニュの半分も終わらないうちに投げ出した先輩の一人が、 「なあ、お前らは幽霊っ […]
第二百五十二夜   早朝まだ薄暗い中、駅前の大きな公園で噴水前の広場で軽く準備運動をする。 冬に走り始めてこれまで続いているのは、周りが暗い中を走ると妙に心の落ち着くからだった。だんだんと日の出が早くなるのに合 […]
第二百五十一夜   大学で知り合った留学生がパンダを見たいと言うので、上野の西郷像で待ち合わせをした。 地下鉄を降りて地上に出ると、初夏の日差しが目を焼く。階段に腰掛けた似顔絵描きの横を登ると、待ち合わせには十 […]
第二百五十夜   夕刻、外での用事を済ませ、帰社するために乗った列車でラップトップ・パソコンのキィを叩いていると、セーラー服の集団が乗り込んで来て、少々喧しくなった。 若い子の元気が良いのは好いことだと年寄り染 […]
第二百四十九夜   カツ カツ カツ 十数歩後ろを硬い足音が背後から付いてくる。最終電車から降り、駅前の小さな繁華街を抜け、公園の脇の道へ入り、辺りが静かになってからずっとだ。 強姦魔か強盗か、それとも単に家の […]
第二百四十八夜   窓外で手を振る二人が見えなくなると、鞄から英単語帳を取り出す。自宅の最寄りまではあと二駅しか無いが、山奥へ向かうに連れて駅の間は広くなる。一駅十分、二十分ほどは明日の小テスト対策が出来る。物 […]
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