第三百七十三夜   まだまだ通常通りとはいかない学校の授業だけれど、市の施設を使うということもあり、私達四年生の校外学習、一泊の林間学校は無事に行われることになった。 その報せを受けた夜、二段ベッド二横になって […]
第三百七十二夜   着替えやら化粧品やら、一通りの荷物を詰め込むと、スーツ・ケースはそれなりの重さになった。それをゴロゴロと引っ張りながら向かっているのは、残念ながら旅行先ではない。住民票を都に移してしまってい […]
第三百七十一夜   この長雨で気温の上がらないのは有り難いが、部屋の湿度も下がる暇がなったのだろう、クローゼットの中の冬物の上着にぽつぽつとカビの生えているのに気が付いた。 クローゼットといっても古いアパートに […]
第三百七十夜   ファミリィ・レストランのバイトを始めて初めて迎える金曜の夜、そろそろ土曜になろうかという頃合いに漸く客が引けて一息といったところ、殆ど空車となった駐車場へ黒いワンボックスが入ってきた。 入店し […]
第三百六十九夜   「疫病騒ぎの中、こんな晩くまでお仕事で大変ですね」 と、車を出した運転手がルーム・ミラー越しにこちらを覗いて声を掛けて来た。 「いやあ、この時間でもタクシィを捕まえ易くなって、却って有り難い […]
第三百六十八夜   珈琲を淹れ終えて席へ戻り弁当を広げていると、今年の新人がエコ・バッグを提げて隣の席へ戻ってきた。近所のコンビニエンス・ストアで昼食を買ってきたのだろう。 お帰りと一声掛けて、冷凍食品のコロッ […]
第三百六十七夜   下校途中、母親から「図書室で本を借りて来なさい」と言われていたのを思い出し、友人達と別れて一人、来た道を走って引き返した。 外で遊べず家でインターネットの動画を見てばかりいると叱られて、 「 […]
第三百六十六夜   営業再開から一月が経ち、この小さな温泉宿にもわずかながら客足が戻り、幸いにして予約に対して手が足りぬようになった。少なからず離れていった元従業員にも声を掛けたが、既に別口で働いている者も多く […]
第三百六十五夜   仕事帰り、最近やや元気の無い妻に好物のアイスを買って帰宅した。近所での買い物の他はトイレ休憩でだけ車を降りるドライブくらいしか外へ出ていないから、そのストレスを労うという口実で、半分は私が食 […]
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