第三百六十七夜

 

下校途中、母親から「図書室で本を借りて来なさい」と言われていたのを思い出し、友人達と別れて一人、来た道を走って引き返した。

外で遊べず家でインターネットの動画を見てばかりいると叱られて、
「他に面白いものもないのだから仕方がないじゃないか」
と反論したところ、それは面白いものを探そうとしていないからだと言われたのだ。

裏門から学校へ入ると、もう校庭には誰もおらず、しんと静まり返った昇降口で上履きに履き替える。

図書室へ続く廊下に出ると、奥の方から子供達の楽しそうな声、ドタバタと走り回る音が聞こえる。校内の託児室からだ。今は換気などの対策が十分に出来ないから閉まっていると聞いていたのだけれど、自分の勘違いだったろうか。

誰か友達がいるかも知れない、ちょっと覗いていこうと駆け出して図書室の前を通り過ぎたとき、不意にそのざわめきが途切れ、辺りが全くの無音になり、思わず無理に立ち止まる。

何かの拍子に皆が口を閉じて、急に静まり返る瞬間というものはある。が、二秒、三秒と待ってみても、物音一つしない。

腋の下に冷や汗が垂れるのを感じ、回れ右をして数歩戻り、図書室の戸を引くと、司書のおばさんがにっこりと微笑んで会釈をしてくれた。

そんな夢を見た。

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