第六百二十二夜   ネットで見付けたちょっと凝ったレシピがちょうど冷蔵庫の中身で作れることに気が付いて、少々早めに昼食の準備に取り掛かった。下拵えを終えて鍋を火に掛けて掻き混ぜると、レシピを表示させて傍らに置い […]
第六百二十一夜   「前任の方、亡くなったんですって?」。 今日初めて派遣された清掃先で、先方の警備責任者という人間が、建物の見取り図と注意事項を書いた書類、入構証と鍵束を手渡しながらそう言った。 「はあ、そう […]
第六百二十夜   何やら冷たいものが頬を撫でる感触で目が覚めた。猫が朝飯をねだりにでも来たろうかと思うが、それにしては感触が冷たい。ならばカーテンが風に吹かれ頬を掠めて揺れているのだろうか。いや、師走も半ばにな […]
第六百十九夜   担任から、娘の通学路について一斉メールで連絡が来た。年末が近付いて気の緩む時期、四月に届け出たそれから大幅に逸れて寄り道をする子供が増えるので、各家庭で適切な指導をとのことだった。 中学生なが […]
第六百十八夜   定期試験の最終日、試験後のホームルームで担任が、五名ほどアルバイトを雇いたいというので立候補した。在校生の定期試験の終わった明日からは中等部の推薦入試が始まるそうで、そのために各教室の机を運び […]
第六百十七夜   夕飯の後の洗い物を終えて風呂を洗っていると、母が犬の散歩から帰ってきた。我が家では犬の散歩は交代制で、夕食後に散歩へ連れて行った者が一番風呂に入る決まりになっている。普段なら帰宅に間に合うつも […]
第六百十六夜   友人と二人連れで映画を見た帰り、夕食を摂るにはまだ早く解散するにはまだ早い。何か甘いものでも食べるのに良い店はないかと繁華街を並んで歩いていた。 暫く歩くと、髭を生やしナイト・キャップを被った […]
第六百十五夜   エレベータ・ホールに到着して下向きの三角形が描かれたボタンを押して上を向くと、一階のランプが点灯していた。 一階のランプが消えて二階のそれが点き、また消えて三階へと移る様子を眺めながら、背後か […]
第六百十四夜   友人がメッセージ・アプリで、 ――ちょっとこれを見て という言葉とともに猫の画像を送ってきた。長毛種の猫が撫でろとでも言うように仰向けになって腹を見せている。 提出課題をやっつけている最中だっ […]
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