第五百八十八夜   店の前に張り出した日除けの簾の陰へ置かれたプラスチック製のベンチに片膝を上げて祖父と向かい合い、将棋を指していた。毎年夏休みになると、姉とともに母の実家である海辺の雑貨屋に預けられ、こうして […]
第五百夜八十七   いつもの時間に家を出ていつものように息子の手を引いて歩いていると、いつもの大型犬を連れたご婦人と出会って会釈をした。いつものように息子が垂れた耳の間を撫でる間、犬はいつものように舌を出しなが […]
第五百八十六夜   上司に連れられて行った取引先との打ち合わせが実に中途半端な時刻に終わり、社に戻らずに直帰することになった。 下り線の途中で上司と別れて電車を乗り換え、最寄り駅に着いて電車を降りると熱風が吹き […]
第五百八十五夜   夜の日課のジョギングを早めに片付け、風呂で汗を流してさっぱりした体に冷房の冷気を浴びながら、簡単な夕食を片手にモニタでドラマを見ながら休日の夜を過ごしていた。 元々が出不精の人見知りなもので […]
第五百八十四夜   夕食を終えて蒸し暑い自室で勉強をしていると、妹が藁半紙を片手に部屋を訪ねてきた。 何の用かと尋ねるとその藁半紙を示し、来週から三泊四日で部活の合宿が始まるのだと言って難しい顔をする。それでピ […]
第五百八十三夜   梅雨の戻りというのだろうか、暫く続いた雨が漸く止んで一転真夏の日差しとなった日の晩、そろそろ明日の仕事に差し支えるからと日課のジョギングに出た。外に出ると、地面が溜め込んだ水分が昼に温められ […]
第五百八十二夜   子供達が夏休みに入って最初の金曜深夜、妻の実家へ高速道路を走っていた。夜の高速道路はその退屈な眺めと程よい走行音の子守唄とで、どうしても眠気が襲ってくる。 幾度目かの生欠伸を噛み締めて涙を拭 […]
第五百八十一夜   相変わらずのテレワークで自室にてPCのキィボードを叩いていると、いつの間にかパタパタとベランダを雨の叩く音がしていた。夕立と呼ぶには少々日が高いが、朝方見た天気予報では夕立、雷雨を警告してい […]
第五百八十夜   数日降り続いた雨から一転して猛暑日となった日の深夜、あまりの蒸し暑さに体が火照って目が覚めた。節電のため適当な時間で冷房が切れるようにタイマを設定していたのが仇となったか。 布団には湿気ととも […]
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