第百三十七夜   漫画喫茶のリクライニング・シートに背を預けながら目を閉じている。どうも、こういうところではしっかりと寝られない。うつらうつらと舟は漕ぐのだが、頭の何処かで、財布を取られはしまいかとか、明日寝過 […]
第百三十六夜   畳の部屋の中央に据えられた丸い卓袱台には簡単な朝餉が載せられ、見知らぬ一家が忙しくも楽しげに箸を動かしている。 それをガラスのあちらに歪んだ形で眼下に眺める私は、どうやら神棚に置かれているらし […]
第百二十五夜   いつの頃からか忘れたが、毎週金曜の深夜になると携帯電話へ見覚えの無い番号から電話が掛かってくるようになっていた。勿論、その電話に出たことは一度もない。 今日もいつもの知らない番号からの電話と確 […]
第百二十二夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の […]
第百十六夜   何年か振りに、この地域にしては大雪と呼べるような雪の降った晩、寝室の窓を叩く音がしてカーテンを開くと、級友のガキ大将が満面の笑みをたたえて窓の外に浮いていた。正確には雨樋を伝い登り、それにしがみ […]
第百十一夜   雪のちらつくホームの端で、直ぐ後ろから流れてくる煙草の煙に目を半ば閉じながら最終電車を待っている。鉄道やバスといった交通機関が禁煙でない時代があったのだ。最寄り駅の改札へ最も近いのが末尾の車両の […]
第百九夜   暖房の効いた始発の電車から、透き通った早朝の空気の中ヘ降り立つ。スーツ姿の休日出勤の同志がちらほらと改札への階段へと吸い込まれてゆく。 駅を出てロータリを回り、簡単な朝食を買おうと店を探すと、ちょ […]
第百八夜   取引先と飲んだ酒がようやく抜け、夜道に車を出したときにはもう日付も変わっていた。 都市部を抜けると対向車も少なく、冴えた冬の空気に素通しのLEDの街灯が目に刺さる。十分に酒の抜けた頭は冷静で、自然 […]
第百夜   風呂上がりの濡れた髪にタオルを巻き、居間兼寝室の炬燵の中で浮腫んだ脚を揉んでいると、風呂場からぎゃあと可愛げのない悲鳴が聞こえた。 ゴキブリでも出たのなら自分で片付けられるような度胸のある妹ではない […]
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