第百九夜

 

暖房の効いた始発の電車から、透き通った早朝の空気の中ヘ降り立つ。スーツ姿の休日出勤の同志がちらほらと改札への階段へと吸い込まれてゆく。

駅を出てロータリを回り、簡単な朝食を買おうと店を探すと、ちょうどパンツ・スーツ姿の女性がキビキビとした足運びでコンビニエンス・ストアへ向かうので、その後に続くことにする。

入り口の玄関マットをパンプスで踏んで入店するのに二歩遅れて続く。

と、額に冷たい衝撃を受けて目から火が出た。よく見れば綺麗に磨かれた硝子の扉が閉まっているのだが、前を歩いていた女性がその取手を押すか引くかしていた覚えはない。

首を傾げながら扉を押して入店し、サンドウィッチの棚へ向かいながら、店内をそれとなく見回したが、スーツ姿の女性は何処にもおらず、レジの前に立つ店員に訝しげな目で見られただった。

そんな夢を見た。

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