第八百四夜    先輩達の怪談一時間ほど続いただろうか。 「じゃあ、私で最後ね」 と語り部の席に着いて宣言した先輩が、 「B棟に入ってる新入生は挙手して下さい」 と微笑むと、私を含めてぱらぱらと手が挙がる。   […]
第七百九十八夜    一週間の疲れを風呂で流し清潔な部屋着に着替えて冷房のよく効いた部屋へ戻ると、乾いて冷たい空気に急速に気化熱が奪われて心地好い。冷蔵庫から酒を取り出し、買い物袋からツマミをテーブルへ並べると […]
第七百九十五夜    「ちょっと、タオルを持ってきてもらえませんか」 と玄関からの外から声が掛かって振り返ると、外回りから戻ってきた営業が扉の前で立ち止まり、首に掛けたタオルで髪や顔を拭きながらこちらを見詰めて […]
第七百九十四夜    立秋を過ぎたばかりの盆休みのはじめ、朝からカメラを持って上野の不忍池へ蓮の花を撮りに向かった。昭和に取り残されたような下町の住宅街からそこまでは自転車で二十分ほど、家を出て陽射しの強さ、空 […]
第七百九十三夜    週末の家事仕事を一通り片付けた土曜、まだ暗く成りきらぬ夕方の終わり際から、配信サービスの映画を観ながら簡単なツマミで酒を飲んでいた。と不意に視界の隅がちらつく。暫く様子をうかがうに、眺める […]
第七百九十二夜    朝日の焼け付く小さなベランダへ洗濯物を干し終わり、気温の上がりきる前に買い出しへ出ようと着替えを始めたところへ、大学時代の後輩から電話が掛かってきた。  在学中から何故かなつかれて、卒業後 […]
第七百七十九夜    昼食時を少し過ぎ、出勤している社員の皆で職場近くの少しだけ高級なご飯屋さんへぞろぞろと向かいながら、 「今年は梅雨入りが遅くてもう大分暑いから、夏バテしないように精のつくものを頼んで下さい […]
第七百七十四夜    先生が教室に入ってくるまで数分の時間潰しのつもりで朝読書に持参した本を読んでいると、しばらく熱中したところで引き戸が開いて先生が入ってきた。顔を上げるとジャージ姿の先生の上の壁掛け時計はい […]
第七百七十三夜    たまの休日に夏物の服を買い込んだ帰り、大きな紙袋を抱えてそのまま帰宅するのも味気なく、ちょっと休憩しようかと喫茶店に立ち寄った。レジでカロリの塊のような飲み物を頼み、小さなトレイに載せて出 […]
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