第七百四十二夜    連休明け、同僚が何やら浮かぬ顔をしてやってきた。朝から随分とお疲れかと尋ねると、小さな子供がいるから体力的に疲労をするのは確かだが、浮かぬ顔を隠せていなかったのならそれは別の要因だと言って […]
第七百四十一夜    昼休みに外食から戻ってきた同僚が、小さな香水の瓶の入ったピンク色のラバーケースを指に引っ掛けて揺らしながらデスクに戻ってきた。スーツに身を包んだ巨体にまるで似合っていない。  それを見た後 […]
第七百四十夜    午後九時を少し過ぎた頃、日課のジョギングで線路沿いの道を走っていたときのこと、踏切の前に停まる列車の最後尾の車両が見えた。車両の立ち往生か、それとも人身事故か。  住宅街を走る私鉄で、朝夕の […]
第七百三十九夜    昼食から戻って用を足し、ハンド・タオルで手を拭いながらデスクに戻ろうと歩いていると、急に名前を呼ばれた。人の顔を覚えるのは苦手ではないが、手を振りながら歩み寄ってくる男性の名はピンとこない […]
第七百三十八夜    冬至を少し過ぎて帰省した際、最寄り駅のロータリで幼馴染の家の父親にばったり出会った。大学に入るまでは私の一家、彼の一家ともうひと家族とで、一緒にキャンプや釣りに出掛けたり、互いの家にお泊り […]
第七百三十七夜    午前中で簡単なホーム・ルームを終えて帰宅しようと席を立ったところ、 「すみません、ちょっとだけお時間を宜しいでしょうか」 と女の子の声がした。目を遣ると何やら冊子の束を抱えた女子生徒が、担 […]
第七百三十六夜    目の疲れが気になって友人に洗面所を借り、コンタクト・レンズを外して眼鏡を掛ける。外した後のこの不思議な爽快感はきっと眼球に酸素の行き渡る感覚なのだろう。  テーブルに戻ると今度は友人が席を […]
第七百三十五夜    予約を入れていたお陰で入店するなり準備万端整った居酒屋の座敷で音頭をとらされて乾杯をし、まだ冷たい唇をジョッキに付ける。もう二十数年も前に転校した小学校で特に仲の良かった五人が集まったのは […]
第七百三十四夜    就業時間を終えて特に残業もなく、身支度を終えたものから三々五々帰宅を始める中、上司から珍しく晩飯でもどうかと誘われた。上司は既婚者でもあり、酒も強くないと自称していたから、まさか声を掛けて […]
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