第三百六十二夜   帰宅時間がラッシュに重なるのが嫌で、このところは会社の指示に逆らって幾らか残業をしてから帰宅することにしている。といっても緊急事態宣言以前よりはむしろ早い時間なのだが、数駅も走ると列車は以前 […]
第三百六十一夜   事務所で机に向かいカタカタとキィ・ボードを打っていると、「こんにちはー」と語尾の間延びした大声とともに長い茶髪の女性が入ってくる。 仕事上の知り合いで、まだ若いのにこれでもかと派手な服装と化 […]
第三百六十夜   週三日、午前中のみと午後からのみの変則的な登校が始まって間もなく真夏日となり、午後の日盛りにアスファルトを歩いて帰宅すると、三月以来の運動不足ですっかり鈍った身体はへとへとに疲れてしまった。 […]
第三百五十九夜   約束の時間までにどうにか部屋を片付け終えてお茶の用意を済ませると、自分用のマグに淹れた焙じ茶を一服しながらチャイムの鳴るのを待つ。 約束の相手はメーカから紹介された街の電気屋さんである。ケー […]
第三百五十八夜   就職先で非常事態宣言が終了し、友人宅へ集まって久し振りに酒盛りをすることになった。 交通の便の良いところが好ましいと誰かが言い出し、それならと名乗り出た者の最寄り駅に集まると、彼は駅前の広場 […]
第三百五十七夜   友人の経営する山の中のペンションに着くと直ぐ、彼の奥様の手作りというチーズ・ケーキで珈琲を飲みながら簡単な打ち合わせをした。 大型連休を疫病のために棒に振ったから、ここで何とか巻き返すために […]
第三百五十六夜   テレ・ワークの要請を受け、ウチの部署では責任者以外が週に一度、曜日と午前午後とを分けてばらばらに出社、それ以外は自宅での在宅勤務という具合に規則が決まった。 仕組みが整ってから初めて自分の出 […]
第三百五十五夜   梅雨らしく判然としない昼下がりの空の下、明日か明後日か晴れるまで待てと止めるのも聞かずに竿とクーラ・ボックスを持って飛び出していった息子が、日の傾いてザアザアと音を立てて降り出した雨の中、息 […]
第三百五十四夜   五時を知らせる地域放送の『遠き山に日は落ちて』から遅れること十分、小学校低学年の息子が息を切らして帰宅した。 何故約束通りに帰ってこないかと叱言を言う私を遮って、 「幽霊、幽霊」 と大声で繰 […]
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