第百四十八夜   公園の水飲み場に溜まった水で行水をしていると、フィヨフィヨフィヨと聞き慣れぬ声がする。 嘴で翼の羽根を梳かしながらチラと見ると、ここらではあまり見ない、茶色い斑の鳥が降りてきた。冠のような飾り […]
第百四十七夜   買い物へ出掛けて都内のターミナル駅で乗り換えようと長い階段を登ると、スーツ姿のまだ似合わぬ若い女性がホームの端に腰掛けている。 しかし、混み合ったホームの中で彼女に注目しているのは多くないよう […]
第百四十一夜   始めたばかりの写真の練習台に野鳥でもと思い立ち、近所の水場へ出掛けた。池に着いて双眼鏡を手にあちらこちらを見回していると、カラスほどの大きさの見慣れぬ鳥が岸辺を歩いているのに出会った。 頭から […]
第百四十五夜   塩を振った馬刺しの強い旨味をアテに芋焼酎を飲んでいると、上司が「ちょっと失礼」と言ってスマート・フォンを取り出す。 奥方への連絡でも忘れていたのだろうと皆少しだけ声を抑えつつ各々の会話を続ける […]
第百四十四夜   一ヶ月ぶりに取引先を訪ね、担当者に応接室へ招かれて中に入ると違和感を覚えた。 入口の扉の正面は大きな窓、部屋の中央に硝子の天板の卓、手前と奥とに革張りのソファ、部屋の四隅には観葉植物が置かれて […]
第百四十三夜   木曜から溜めた洗濯物を、人がおらず、かと言って暗くもない早朝にコイン・ランドリィへ洗濯に出るのが、勤め始めてからの私の習慣である。 道端に咲き誇る躑躅や薔薇を横目に行きつけの店へ向かっていると […]
第百四十一夜   行きつけの定食屋で豚カツを頼み、割り箸を擦り合わせてささくれを取り除いていると、後ろのテーブル席から火山の噴火がどうこうという声が聞こえた。そんなニュースも有ったなと、何とは無しにテーブル席を […]
第百四十一夜   健康だけが取り柄の私が突然の腹痛に襲われて病院に担ぎ込まれ、痛みに悶ているうちにあれよあれよと事が進んで、いつの間にやら手術が終わって入院という運びとなった日のことである。その晩、これまで入院 […]
第百四十夜   夜の繁華街を歩いていると、酒に酔った男達が露骨な視線をこちらへ送る。中には声を掛けてくる者もいるが、勘違いされては困る。ここを狩場にしているのは私の方なのだから。 言い寄る男を「シャー」と威嚇し […]
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