第百六十六夜
日照り続きで水嵩の減った川の流れは緩く、川面はいつもに増して滑らかに入道雲を映している。
その空に円い波紋が音もなく生まれ、川の流れに間延びして広がる。
アメンボだ。
群れとはぐれでもしたか、一匹のアメンボが数秒に一度、上流に向かって水面を蹴って波紋を作る。波紋は水に流されて下流に向かって歪んで広がり、空と入道雲とを揺らす。
ぽっかりと、空に大きな穴が空いて、アメンボウを飲み込む。
鯉だ。
狩りの結果に満足したのか、鯉はゆっくりと尾鰭をくねらせて入道雲の向こうへと沈んでゆく。
川面はいっそう滑らかに入道雲を映すようになった。
そんな夢を見た。
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