第二百二夜   行き付けのバーで友人に待たされ、独りでスマート・フォンを弄りながらカクテル・グラスを舐めていると、手の空いたマスタがグラスを磨きながら、 「お連れの方は」 とカウンタ越しに声を掛けてくれた。 ス […]
第二百一夜   風呂上がりの濡れた頭を拭きながら暗い廊下を歩いていると、年末年始の休みに帰省して来た兄の部屋の扉の隙間から光が漏れていた。父と二人して酔いつぶれたのを母と二人で運んでやったのだが目を覚ましたのだ […]
第二百夜   家路に吹く風の予想外な冷たさに、遅い夕食を確保しに立ち寄った深夜営業のスーパーで葉物と鶏肉を買わされた。 簡単に煮込みうどんにでもして暖を取ろう。 そんな夕餉への期待を頼りに人気のない寒空の下を歩 […]
第百九十九夜   丸一日降り続いた雨が上がって、日課のジョギングに出た。長雨に埃の洗われた秋の夜空に透き通る星明りが美しい。 家からほど近い大きな公園を小一時間走って、休憩をしようといつも腰を下ろすベンチへ向か […]
第百九十八夜   解体業者の友人に頼まれ、県外の古い平屋へバンを駆ってやって来た。 間の悪いことに若い作業員が骨を折ったり、親戚に不幸があったりで都合が付かず、手伝いを頼まれたのだ。 その代わり、所有者の残して […]
第百九十七夜   休み時間の終わり際、子供達を教室へ戻るよう促しながら受け持ちの教室へ向かっていると、廊下の突き当りの扉の向こうからこちらを覗く子供の姿が見えた。 突き当りにはアルミニウムの枠に上半分がガラス張 […]
第百九十六夜   娘達二人の七五三の写真が仕上がったと言う連絡とともに、近所の写真館から光学ディスクが送られてきた。きれいに製本した小さなアルバムを作るサービスを利用したのだが、実際に仕上がるまでのツナギにデジ […]
第百九十五夜   雨の止んだのを見計らい、秋雨続きで溜まった洗濯物を抱えて、アパートから徒歩数分のコイン・ランドリィへ向かう。 人気のない店内に入ると、一人暮らしの一週間分の衣類を洗濯機へ放り込む。洗濯機を回し […]
第百九十四夜   満員の急行列車が駅を通り過ぎようとして、けたたましい金属音と共に急ブレーキを掛けた。と、目の前の座席で先程まで船を漕いでいたセーラ服の少女が、急に体を強張らせて呻き声を上げる。 緊急停止を詫び […]
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