第二百二十三夜

 

一人暮らしの休日の夜のお供にと、近所で映画を借りてきた。わざわざ寒い中を出掛けなくてもネットの配信サービスを使えば好さそうなものだが、同じような夜の過ごし方をする同士が多いためか、この時間は安アパートの通信回線が重くなる。誰を待たせるわけでもない、散歩のついで、買い出しのついでと思えば出歩くのも悪くは無い。

アパートに付き、かじかんで感覚の鈍くなった手で錠を開けると、冷たい夜風に吹き込まれるように自宅のドアを潜る。靴を脱ぎ、ユニット・バスと台所の間を通るワンルームの短い廊下を抜けて居間に入っても、ほんの一時間暖房を切っていた室内の空気は冷たい。

居間の電灯を点け、ビニル袋から缶酎ハイとツマミのおでんを取り出して炬燵の上に並べてから、借りてきた映画のディスクをモニタ横の再生機にセットする。

モニタと炬燵の電源を入れ、上着とニット帽をハンガーに掛ける。再生機のリモコンを手に取って炬燵の前に腰を下ろし、脚を突っ込んで、
「あ、ごめん」
と思わず謝る。炬燵の中で、冷たい脚を先客の脚にぶつけてしまったからだ。
――あれ?
と首を捻りながらモニタの入力元を設定し、再生を始める。勿論、部屋には私の他に誰も居ない。

寝ぼけてペットボトルでも転がしたかと思い炬燵布団を持ち上げて中を覗いてみても、私の脚だけが赤々と照らされている。
――確かに、何かにぶつかったのだがなぁ。

そう思いながら、缶酎ハイのタブを引き開け、割り箸を割って、いただきますと手を合わせると、救急車のサイレンが近付いてくるのが聞こえた。

そんな夢を見た。