第二百二十夜

 

朝が弱いので、朝食は茹卵、ブロッコリと餡パンを珈琲で流し込むのが、自炊に手を抜く用になってからの定番となっている。

茹卵もブロッコリも日曜の夜に一週間分を茹で、冷蔵庫に入れておく。餡パンはクルミとアーモンドが生地に練り込まれたもので、近所のパン屋の人気商品なのだが、防腐剤・防カビ剤の類が使われていないために日持ちがしないので、毎週月曜と木曜の帰宅途中で買い、同じく冷蔵庫で保管する。このサイクルによって、毎朝冷蔵庫を開け、薬缶を火に掛けるだけで朝食の支度が整い、延いては朝の幸福な微睡みの時間をたっぷりと味わえるわけだ。偏食と言えばそうかもしれないが、社員食堂のメニュは栄養管理士が監修して、セット・メニュを頼み続ければ週を通してバランスの良い食事になっているそうだし、ジムのトレーナに朝食のメニュをいちいち相談するのも面倒で、特に飽きが来るでもないのでメニュを変える必要もない。

それでも出勤の時間はやってくる。部屋の空気が十分に暖まったのを確認して布団から這い出し、冷蔵庫を開け、餡パンのビニール袋とブロッコリの容器を左手に、マヨネーズと茹卵を右手に持って卓袱台へ置き、餡パンを齧りながら薬缶に水を入れてコンロに掛ける。

大ぶりの餡パンで、残念ながら一口目は餡に届かずパンのみで、それでも生地の微かな塩味が口中に広がるとともに舌の裏から唾液が湧く。

薬缶の前で湯気が立つのを待ちながら、二口目を齧って、思わず大きな声で叫んでしまった。

口の中に広がったのは、イチゴ・ジャムの酸味だった。

そんな夢を見た。