第四百六十八夜   大浴場から戻ると、火照った身体を冷やすべくビールと適当なツマミを内線で頼み、一人旅には余りに贅沢な部屋を見渡す。ワクチンの接種が進んだとはいえ時期でもない平日のこと、リモート・ワークを旅先で […]
第四百六十七夜   仕事帰りに立ち寄った駅前のスーパーを出て、住宅地へ続く道を数分歩くともう人気は殆ど無くなり、静かに湿った夜道がLEDの街灯をぬらりと反射しているばかりとなった。 これだけ交通量の無い中ならと […]
第四百六十六夜   御茶ノ水の病院からの帰途、橋から見下ろすホームに人が犇めき合っているのが見えた。改札前も黒山の人だかりで、拡声器のアナウンスで漸く、人身事故で電車が止まっていると知れた。 友人の見舞いだった […]
第四百六十五夜   疫病騒ぎの運動不足解消にと冬頃始めた早朝のジョギングを、気温の上がり人の増える前にと日の出に合わせていたのだが、もう夏至も間近とあって四時には目覚ましを止めて支度をしなければならなくなった。 […]
第四百六十四夜   早朝、事務所の駐車場に着くと、既に昨日見た黒いワンボックス・カーが停まっていて、こちらが車を停めている間に中から金色のソバージュ男が現れた。デニムのダメージ・パンツに黄色いTシャツ、黒革のベ […]
第四百六十三夜   買い貯めした向こう一週間分の食料品を両手に提げて量販店を出ると、予報に反してにわか雨が路面を濡らしていた。 傘は持っていないが、両手の塞がっている以上濡れて歩くことには変わりないので濡れて帰 […]
第四百六十二夜   客が少ないからと連絡してきた友人の飲み屋で夕食代わりの晩酌をしていると、隣で友人自慢の自家製チョリソをアテにちびちびとワインを舐めていた老紳士が話し掛けてきた。 彼も自営業をやっているらしい […]
第四百六十一夜   買い物から帰宅した私を、西日に当たって橙色に染まるキャット・タワーの中段に寝ていた猫が面倒くさそうに首を上げてこちらを見た。目が合うとそろそろ夕食と気付いて立ち上がり、背を丸めて伸びをしてか […]
第五百夜   先生に不意に背中を叩かれ、慌てて、 「よろしくお願いします」 と頭を下げると、横一列に並んだ先輩や同学年ながら他学級の生徒達も口々によろしくと答えたり、小さく会釈を返してくれた。 何もこんな時期に […]
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