第六百五十九夜   休日の朝早く、割と仲の良いバイト仲間が入院したから代わりに入ってほしいと店長から連絡が来た。半日仕事をした後、都合のつくときに見舞いにでも行こうかとメッセージ・アプリで連絡を入れると、入院し […]
第六百五十八夜   今日は入院した友人の見舞いに、友人三人で地域のターミナル駅に待ち合わせをした。入院と言っても大怪我とか大病というわけではないらしい。足に出来た傷口からなんだか悪い菌が入って大きく腫れ、傷の位 […]
第六百五十七夜   事務所を出て春雨のしとしとと降る中を小走りに駆け、倉庫の錠前を外して中に入ると、バケツから固く絞ったモップを手にとって掃除を始める。 うちは小道具貸しの小さな会社で、都からほど近い田舎に倉庫 […]
第六百五十六夜   仕事帰り、最寄り駅と半ば一体化した商業施設に入った本屋で一冊の単行本を買った。単行本といっても漫画である。自分でもいい歳をしていつまで集めるものかとも思うが、集め始めた小学生の頃から連載が終 […]
第六百五十五夜   アパートの玄関前で花粉を払って扉の内に入り、洗濯物をビニル袋にまとめて風呂に入ると、髪や肌に付いた花粉の影響なのだろう、あちらこちらが痒くなり、くしゃみが止まらなくなる。鼻うがいも含めて念入 […]
第六百五十四夜   目を閉じて気分良く列車に揺られていてふと目を覚ますと、ちょうど会社の最寄り駅の一つ手前の駅に着いて扉の開くところだった。次の駅までもう数分の猶予しかないと、重い瞼をどうにか閉じずに過ごさねば […]
第六百五十三夜   深夜十二時を少し回り、もうじき最終間際の電車の客で店が忙しくなるかという頃、入り口の自動扉が開いて入店を知らせるメロディが鳴った。マニュアル通りの挨拶をして振り返ると、制服姿の警官とスーツ姿 […]
第六百五十二夜   山桜の名所にほど近い温泉宿を独り訪れた。仲居の勧めるままに頼んだ地酒で気分の良くなったところで部屋を出て時限の迫った大浴場に入ると、日中桜見物に歩き回った疲れが身体の中でどろどろに溶けたよう […]
第六百五十一夜   しとしとと春雨の降る晩、久し振りに戻ってきた肌寒さを肴に熱燗の準備をしていると、インターフォンの古臭い電子音が鳴った。水場の磨りガラスから戸の前に立つシルエットを観るに、ここの一階に住む大家 […]
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