第六百五十六夜

 

仕事帰り、最寄り駅と半ば一体化した商業施設に入った本屋で一冊の単行本を買った。単行本といっても漫画である。自分でもいい歳をしていつまで集めるものかとも思うが、集め始めた小学生の頃から連載が終わらないのだから仕方あるまい。一度集め始めたものを完成させずに居るのは、なんとも座りが悪い。変なところで几帳面な性格のせいで、今日も発売日に新刊を買ったというわけだ。

途中弁当屋で量り売りの惣菜を買って帰宅し、それをツマミに缶チューハイを飲みながら早速フィルムを剥がしてページを捲る。自分は単行本派で、雑誌の連載は読まずに我慢をする。こうしてある程度まとまった分量を新鮮な気持ちで読むのが快感なのだ。

ツマミを半分ほど消費したところで読み終え、壁際の本棚へ仕舞いに席を立つ。数ヶ月に一度出る新刊をアパートの本棚に並べ、正月に帰省する度に実家の自室の本棚へ移動させていたのだが、病騒ぎで暫く帰らずにいたためにもう随分とたまってしまっている。次の盆休みには帰省して本棚を空けようか。

そんな事を考えながら左から若い順に並んだシリーズの背表紙をなぞり、右端に隙間を作って新刊を押し込む。綺麗に並んだ背表紙を改めて目でなぞると、違和感を覚える。

十、十一、……、十五、十六、十六。新刊が二冊ある。これは可怪しい。今読んだ内容は明らかに初めて触れる内容だったし、そもそも今日発売の新刊が、一人暮らしのこの部屋にあるはずが無い。

いつの間にか存在していたもう一冊の新刊の内容が気になりはするが手に取るのも気味が悪く、ひとまずその扱いは保留して晩酌の続きをすることにして本棚の前を離れた。

そんな夢を見た。