第四百七十二夜   高校から帰宅して玄関の引き戸を開けると、どこかからチリチリと、とぎれとぎれに何かの金属音が聞こえた。 不審に思いつつも靴を脱ぎ、玄関のすぐ脇の階段で自室のある二階へ上ると、それは弟の部屋の戸 […]
第四百七十一夜   強制的に始まったOSのアップデートが終わり、漸く仕事に取り掛かれると安心して珈琲を淹れに席を立った。 全く身に覚えはないが、何かの拍子で自動アップデートを許可してしまったのだろう。仕事を始め […]
第四百七十夜   「ほいこれ、今日中に回ってね」 と笑顔の社長が差し出した紙袋には、A3のバインダが一つと大量の線香の束、日本酒のガラス・カップ十数本、そして商売繁盛で有名な神社の御札が入っていた。 最後に社用 […]
第四百六十九夜   従業員に発熱した者が出て人手が足らぬからと急遽系列店へ呼び出され、勝手の違いに多少戸惑いつつも仕事をこなし、一息吐くともうとうに日付が変わり、草木も眠る頃となっていた。 労いの缶珈琲を受け取 […]
第四百六十八夜   大浴場から戻ると、火照った身体を冷やすべくビールと適当なツマミを内線で頼み、一人旅には余りに贅沢な部屋を見渡す。ワクチンの接種が進んだとはいえ時期でもない平日のこと、リモート・ワークを旅先で […]
第四百六十七夜   仕事帰りに立ち寄った駅前のスーパーを出て、住宅地へ続く道を数分歩くともう人気は殆ど無くなり、静かに湿った夜道がLEDの街灯をぬらりと反射しているばかりとなった。 これだけ交通量の無い中ならと […]
第四百六十六夜   御茶ノ水の病院からの帰途、橋から見下ろすホームに人が犇めき合っているのが見えた。改札前も黒山の人だかりで、拡声器のアナウンスで漸く、人身事故で電車が止まっていると知れた。 友人の見舞いだった […]
第四百六十五夜   疫病騒ぎの運動不足解消にと冬頃始めた早朝のジョギングを、気温の上がり人の増える前にと日の出に合わせていたのだが、もう夏至も間近とあって四時には目覚ましを止めて支度をしなければならなくなった。 […]
第四百六十四夜   早朝、事務所の駐車場に着くと、既に昨日見た黒いワンボックス・カーが停まっていて、こちらが車を停めている間に中から金色のソバージュ男が現れた。デニムのダメージ・パンツに黄色いTシャツ、黒革のベ […]
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