第百五十七夜

 

友人に誘われて、人里離れた山奥へ早朝から同僚が合計四人、一台の車に乗り合わせてドライブをしていた。高速道路を下りて一時間ほど走ると、辺りは一面田畑の緑が広がり、その中に点在する一軒の家でセダンから二台の軽トラックへ乗り換え、また山へと車を走らせる。

ハンドルを握る彼の誘いで、初夏の山へ山菜採りに行くのである。

その山は彼曰く、
「GHQに取られて一つしか残っていない山でね、もう効率も良くないし、病気が流行った頃に林業はやめて、今は原生林みたいにしちゃったところなんだ」
そうで、
「親戚連中で連絡を取り合いながら、春と夏前には山菜、それから秋に茸狩りをするついでに、ちょっとした手入れをすることになっていてね」。

今日はその当番が彼であり、親戚連中の中で唯一所帯を持たない彼が、人手集めとお裾分けを兼ねて我々同僚を誘った訳である。

山道を登る途中、山側へ切り上がる砂利道へ入り、
「私有地に付き立ち入り禁止」
と看板の吊るされたチェーンを外して登った先の広場へ車を停める。後続の軽トラックから降りてきて、
「林業をやっていた頃の名残りですか?」
と問う後輩に肯定の返事をしながら、彼は広場の奥に停められていた一台のセダンを睨めつけている。

車から降り、籠や手袋などを身に着けるよう指示をしてから、彼はセダンの方へ歩いて行き、ナンバー・プレートや車内を覗き込む。

どうかしたのかと声を掛けると、彼は心底迷惑そうに眉をへの字にして説明してくれた。

多いんだよ、山菜泥棒とか、茸泥棒とか。私有地だって表示しててもお構い無しで入って来る。まあ、こっちだってほとんどほったらかしてるような山だから多少採って帰るくらいは構わないんだけどさ。

でもな、年に一台か二台、ああやって車が放置されてるの。私有地だからって勝手に処分するわけにもいかなくて面倒なんだよね。キィでもあれば他所へ持っていけるんだけど、定ってキィ無しで施錠されてるんだよな。

「それってどういうことですか?」
と尋ねたのは後輩だったが、彼が何を言わんとしているのかについては私も全く見当が付いておらず、素直に尋ねた後輩に感謝を覚える。
「つまりさ、あれは捨てられた車だとか、車の中で自殺したとかじゃなくて」
と、彼は言葉を探すように一呼吸置いた。
「乗ってきた連中が、山の養分になったってことなんだろうな」。

そんな夢を見た。