第八百二夜    半年振りに出張で東京へ行っていた同僚が、土産のお菓子で膨らんだ紙袋を手に出社してきた。そこから一つを取り出して他の同僚に手渡し皆に配るよう頼むと、残りを休憩室に運び込む。  給湯室でお茶を淹れ […]
第七百三十七夜    午前中で簡単なホーム・ルームを終えて帰宅しようと席を立ったところ、 「すみません、ちょっとだけお時間を宜しいでしょうか」 と女の子の声がした。目を遣ると何やら冊子の束を抱えた女子生徒が、担 […]
第七百五夜   撮れない写真 バイトの休憩時間になり、トイレへ立ち寄ってからバックヤードに戻ると、オーナー夫妻がパソコンの前でモニタを眺めながらしきりに首を捻っていた。 こちらに気付いた奥さんから賄い代わりのお […]
第六百九十一夜   駅前の大きな公園で花火がしたいという子供達の付き添いからの帰り道、同じ方面の最後の子との別れ際に 「じゃあ、うちはこっちだから、またね」 と言ってコンビニエンス・ストアの角を折れた。 すると […]
第六百八十六夜   大学時代の友人の結婚式にて、控室で久し振りに会った友人達とお喋りをしていると、そのうちの一人の様子が気になった。お琴やお茶を習っているという彼女は大学生の頃から和装が好きで、機会があれば品良 […]
第六百八十夜   うだるような夏の午後、いつも通り閑古鳥の鳴く店内でお手製のかき氷をスプーンで突付いていると、硝子の棒の触れ合う涼やかな音が店内に響いた。戸外の熱気と共に店へ入ってきたのは体格の良い短髪の男性で […]
第六百四十四夜   憂鬱な月曜の朝に目を覚まし、洗面台の前に身を屈めて驚いた。背中から脇腹が痛むのだ。といってもそれは学生時代によく味わっていた痛みで、恐らく病期の類ではない。筋肉痛だ。 洗顔後、簡単な朝食を摂 […]
第五百六十四夜   トレイに載せたカップ二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい御札!作ってきた!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の客も少 […]
第五百六十二夜   じゃあまた明日と皆と別れて裏口を出ると、花の金曜日の夜の街はネオン・サインもほとんど無く、往年の活気を思えば随分と寂しいものだった。 酔いの回った頭に疫病への恨み言を浮かべながら徒歩一分、ぽ […]
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