第四百四十四夜   春休みの間預けられた母方の実家で勉強部屋としてあてがわれた部屋にて、今日も春休みの課題の日割り分を終えて時計を見るとぼちぼち祖母が昼食の準備を始める頃合いだった。 手伝いをしに下へ降りようと […]
第四百四十三夜   棚の下からせっせと本を取り出して並べているお姉さんの忙しなさに少々引け目を感じながら、済みませんと声を掛けると、彼女は即座に作業を中断し、ハイと返事をしてこちらを振り返った。 その目の色から […]
第四百四十二夜   オンラインでの会議を終え、すっかり冷めた珈琲を淹れ直してパソコン・ラックへ戻ってくると、上司からの通話要求を知らせるサインが点灯していた。 慌てて通話を開始し、カップを見せながら待たせたこと […]
第四百四十一夜   母に呼ばれて居間の扉を開けると、焼きたてのホット・ケーキの香りが鼻腔をくすぐった。 妹と並んで食卓に座り、バターとメイプル・シロップを掛けてナイフで一口大に切り分けて口へ運んでいると、背後で […]
第四百四十夜   大きな浴槽にたっぷり張られた熱い湯に肩まで体を沈めると、冷え切った手足の末端へ湯の熱がじんじんと染み込んでくるようで、自然と溜息が出た。生き返るとはこのことか。そんな言葉に同僚から、まだ若いの […]
第四百三十九夜   数日ぶりに気持ちよく晴れた日曜の朝、春の長雨のために溜まってしまった洗濯物を午前中にやっつけてしまおうと、ベランダの物干しに洗濯物を吊るしていると、背後からインターフォンの呼び出し音が聞こえ […]
第四百三十八夜   荷物持ちを期待して買い物に連れて行った弟が帰り際、 「本屋に寄っていきたい」 と言いだした。目論見の外れたことを内心で嘆きつつ、生鮮食品の袋を受け取って一人家路を歩くことにする。 弟が大学進 […]
第四百三十七夜   カートに載せた一週間分の食糧を眺めながら、屋上の駐車場へ向かうエレベータの到着を待っていた。最近は運動不足を補うべく、多少のことなら階段を上り、自転車や自動車を避けて歩くことにしているが、流 […]
第四百三十六夜   目元をハンカチーフで押さえながら幾度も深々とお辞儀をし、礼の言葉を繰り返しながら、小さな自転車を積み込んだ大きなワンボックス・カーに乗り込んだ若い夫婦はゆっくりと去って行くのを見守っていると […]
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