第七百十七夜   便所からデスクへ戻ろうとして、見るともなく同僚のデスク上を見て、犬の写真が飾られているのが目に入った。 「あれ?」 と思わず声が出る。彼女の家では幼い頃から一緒に育ったという老犬が飼われている […]
第五百四十九夜   部活の午前練習のために早起きして身支度を整えて居間に向かうと、寝間着姿のままの父がコンロに向かい朝食の準備をしていた。今日は父がリモート勤務で朝食当番らしい。 棚から皿と椀とを取り出して父の […]
第五百四十一夜   折角の休日だというのに寝覚めの悪い朝だった。十年ほど前に老衰で死んだ犬が夢に出たのだ。いや、ただ夢に出るだけならば何の問題もないどころか、内容に依っては嬉しいくらいのことなのだが、内容がよろ […]
第三百四十九夜   日の高くなる前に庭の草を毟り、風呂でその汗を流し、さてそろそろ昼食の準備に取り掛かろうかと、蕎麦を茹でるべく鍋に水を張って火に掛けたときのことだ。 ワンワンと二度、犬の鳴くのが聞こえる。隣で […]
第百六夜   正月呆けの抜けぬ身体にスーツを纏って家を出ると、早朝の凛と硬い空気に思わず首が竦む。新暦で年が明けたと言っても、春はまだまだ先である。 コートの襟に頬を埋めながら階段を下り舗装路に出る。寒々しく枯 […]
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