第八百四十夜    一月も半ばを過ぎ冷え込みがきつくなってきたためだろうか、近所の爺さんが亡くなった。小さな町の酒屋――今はコンビニエンス・ストア担っているが――の主人で、息子とは幼馴染で長いこと腐れ縁が続いて […]
第八百三十九夜    成人式、と今は言わなくなったのだったか、とにかく同世代の若者が集まる公的なイベントの日、バイトに入ったカラオケ店は入れ代わり立ち代わりで客が途切れることがなく、フードメニューの一部が底をつ […]
第八百三十八夜    遅刻ギリギリになって教室に入り、急ぎマフラを解いているうちに先生が教室に入って来た。畳んだマフラを鞄に詰め、コートから腕を抜きながら席に着いて前を見ると、教壇に立っていたのはいつものジャー […]
第八百三十七夜    七草粥も食べてぼちぼち正月気分も抜けた頃、在宅ワークで凝り固まった肩をコタツの座椅子で回していると、息子が小学校から帰ってきた。一足先に帰ってきて私の隣で早速出された宿題を解いていた娘がび […]
第八百三十五夜    除夜の鐘の聞こえる店内で仕事をしていると、客に家族がやってきた。恥ずかしいからやめてくれと明るいうちに言い含めておいたのだが、きっと弟か父の提案だろう、母と三人揃ってやって来て、年越しそば […]
第八百三十四夜    実家に着いて荷物を置くなり、娘がリュックサックからシロクマのぬいぐるみを取り出して母に差し出す。つい先日のクリスマス会のプレゼント交換で貰ったものらしいのだが、 「中から人間の毛みたいなも […]
第八百三十三夜    出動先から先輩が戻ってきた。労いの言葉を掛けながら彼のマグカップにインスタントの珈琲を淹れて机に置く。手洗いとうがいを済ませた彼はひとこと礼を言ってちびりとっ口を付け、冷えた手でマグを包む […]
第七百三十夜    そろそろ年賀状を用意しなければと思っていたところへ、もう十数年は会っていない古い友人から一枚の葉書が届いた。盆に親族が立て続けに亡くなったため、今年の年賀状は送らないと言う挨拶だった。  そ […]
第八百二十九夜    学校から帰って玄関の扉を引くと、予想に反して鍵が掛かっていて小さくつんのめった。のめりながら朝の母の言葉を聞き流していたのを思い出す。夕方に用事があって出掛けるるから、塾へ行く前に冷蔵庫の […]
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