第八百五十一夜
少し遅い昼休みを取って職場近くにある量販店の大型店舗へ入ると、二階へ続くエスカレータの前に車止めが置かれ、店舗改装のために一階の食料品売場のみの営業だとの張り紙がされていた。昼食のついでに日用品を買い揃えたかったのだが、そういうことなら仕方がない。
弁当とトマト・ジュースをカゴに入れて同僚と食べる菓子類を物色していると、エレベータの前に中年の男性二人、三十手前だろう男女一人ずつが輪になって立ち話をしている。棚の菓子を眺める後ろから聞こえてくる話の内容から察するに、中年の一人はこの店舗の店長、もう一人は本部の偉い人、若い二人は店員で、昼までの勤務を終えたところで中年二人に捕まったらしい。
本部の偉い人が、
「そういえば、このエレベータの噂って、今の若い子も知ってるの?」
と尋ねると、若い男が、
「あれですか?幽霊が出るっていう」
と半ば馬鹿にしたような口調で呟く。と、先程まで「いつまで小父さん達の無駄話に付き合えばいいのか、早く帰らせてくれ」と顔に書いてあった女の子が、
「あ!あれ、ホントなんですよ。私も何度も見ましたもん」
と半ば叫ぶように声の調子を上げる。周囲の客の目が集まって上司に注意されると彼女は肩を竦め、声を潜めながらも、
「最近はホワイトデーの頃だったかな、事務所階のボタンを押して私一人で乗ってたら、ぼーっとボタン見てたんですけど、いつの間にか途中の階のボタンが光ってて……」
と力説する途中で、
「次のお客様どうぞ」
と会計係から呼ばれてしまった。
そんな夢を見た。
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