第六百九十三夜

 

買い物袋を手に帰宅すると、先に帰って夕飯の支度をしていた夫が、
「さっき、義伯父さんから電話があったよ」
とこちらを振り返った。

コンロの前に立つ彼の横で荷物を冷蔵庫に仕舞いながら、オジさんとは何処のオバさんかと尋ねると、私の伯父を名乗る男性だったという。盆に数年ぶりの墓参りに行った際に行き違いで会えなかったから、その関係か、ひょっとしたらあちらに何か忘れ物でもしたろうか。

後で折り返すように伝えたという彼の言葉に従って、冷えたリビングで麦茶を片手に電話を掛ける。

呼び出し音が鳴ると間もなく相手が通話に出、こちらが名乗るや否や、
「ああ、今日はごめんねぇ。わざわざ来てくれたのにまた家を空けてて」
と謝罪の言葉が聞こえてきた。
――今日?また?
と頭に疑問符が踊る。どうやら伯父は、私が今日伯父のいる本家を訪ねたと思っているようだ。が、いくら本家が車で一時間半ほどの距離にあるとはいえ、朝から仕事で拘束されていた私にそんな時間はなかった。そう説明するも伯父は「そんなはずはない、確かに来たはずだ」と譲らない。

本人が否定しているのに何を根拠にと思いつつ、角の立たぬよう言葉を選んでその理由を尋ねてみると、
「うちのインター・フォン、あるだろう?何年か前に、物騒だからって交換してさ、録画機能付きのヤツに。それに映ってたんだよ、昼の十一時過ぎに」
と自信満々だ。

そう言われてもこちらには身に覚えがない。少々気味が悪いものの、きっと他人か親戚筋の空似でだろうと言うと、
「うーん、見間違えるとも思えんけどなぁ」
と煮えきらぬ様子ながら、また暇を見つけて顔を見せに来てほしいと言って伯父は電話を切った。

そんな夢を見た。