第六百七十八夜

 

久しぶりによく晴れた休日の午後、早々に乾いた洗濯物を取り込んでいると、ポケットの中でスマート・フォンが振動した。そそくさとベランダへの掃き出し窓を閉めて冷気の流出を止めてから確認すると、大学のサークルの友人からの通話だ。

何の用かと出てみると、唐突に暫く泊めてほしいと言う。まあ、こちらへ出てきてから出来た数少ない友人の頼みだ。行儀さえ良くしてくれるならと、最寄り駅の近くを待ち合わせ場所に指定し適当な時刻に迎えに行くと言うと、彼は大いに感謝の辞を述べて通話を切る。想定外の事態に部屋を見回して簡単に片付け、男一人が寝られるスペースを確保しているうちに約束の時刻が近付いて、彼を迎えに家を出る。

自転車に跨って駅前に着くと、アーケードの日影に結構な大荷物を抱えた彼が見える。その荷物の量に修学旅行を思い出したと冗談を言うと、
「不動産屋次第だけど、そこまでの大事にはならないように頼んでいるところだ」
と張りのない声を漏らす。

ひとまず家へ荷物を置くべく、まだ強い日差しの下を並んで歩きながら事情の説明を求める。
「昨日の夜中にさ、明日提出のレポートをやっつけてたんだけど、十二時過ぎかな。突然、窓がバンって叩かれたんだ」
と始める彼に、
「何だ、怪談の類か?」
と茶々を入れると、
「いや、強盗とかの類だったら怖いと思ってさ。でもカーテンをきっちり閉めてて、誰かいるかどうかもわからないし……」。

集中できないながらレポートに取り掛かりつつベランダを気にしていたが、それから一向に人の動くような気配も物音もしなかった。それでいつの間にかにレポートの方に集中し、一区切り付いたところで眠ることにした。
「それで今朝起きて顔を洗ってカーテンを開けたらさ、窓の真ん中に血がべっとり付いてて……」。
ベランダには千切れた人の腕が落ちていたと言う。慌てて警察に通報すると警察が大挙してやってきて、昨晩深夜に起きた人身事故の遺体の一部だろうと言う。彼の借りている部屋は駅からは通り一本以上も離れているのに、
「よりによってウチまで飛んでくるとはなぁ」
と、その光景を思い出したのか顔色を一層悪くして彼はため息を吐いた。

そんな夢を見た。