第六百七十三夜

 

宿泊学習で県内の湖畔の県営施設に宿泊し、早朝に起きて霧雨の中のラジオ体操を終えるとすっかり身体が冷えていた。食堂へ移動して温かいスープを飲むと、腹に収まった熱がじわじわと手脚へ広がって行くような気がする。

黙々と食事をしていると、長机の隣に座った同室の級友が、
「なあ、昨日、御札騒ぎがあったって知ってるか?」
と小声で尋ねてくる。軽く首を振って何のことかと尋ねると、
「うちのクラスに、ゴツいカメラを持ってきた奴、居ただろう?」
と言う。言われてみれば昨晩の就寝前、記念写真を撮ると言って部屋を尋ねてきた級友が居た。本来は高価なカメラの携行は禁止されていたのだが、カメラ小僧の彼が担任と交渉して、幾つかの条件の下で認めさせたそうだ。その条件の一つがクラスのメンバーを平等に撮影することだそうで、就寝前に各部屋を回って部屋のメンバの揃った姿を撮して回ったのだそうだ。
「体操中に隣の女子に聞いたんだけどさ、あいつがその子の部屋に撮影に入ったんだけど……」
狭い部屋の両側に置かれた二段ベッドの右手下段に四人を座らせ、ポーズを取らせたところで彼が首を捻る。どうかしたのかと尋ねると、何故かシャッタが切れないと言う。先程まではちゃんと動いていたと言いながら弄っていると、窓に向かってシャッタが切れる。カメラの機嫌が治ったかと気を取り直して女子の方を向き直るとやはり動かない。試しに真後ろのベッドを向いてみるとこちらはちゃんと撮影できたので、結局そちらのベッドに移動して撮影をしたのだそうだ。
「で、嫌な予感がした女子達が幽霊でも出るんじゃないかってその、写真の撮れなかったベッドをあちこち探したら……」
と勿体ぶる彼に、
「御札でも貼ってあったのか、そのベッドに」
と先回りしてやると彼は首を振り、
「逆だっったんだって。シャッタの切れたベッドにだけ、御札が貼ってあったんだってさ。お陰で四人、一つのベッドにぎゅうぎゅうになって寝たんだって」
と笑うのだった。

そんな夢を見た。