第六百二十四夜

 

寂しい者同士が三人で映画でも見ながらケーキをつつこうと友人のアパートへ集まった。各々が気を利かせて持ち寄った酒と甘味とを合わせるとなかなかの量になり、さながらカロリーの過剰摂取大会である。

元より泊まり込みのつもりで集まっているので、物資に不足の無いだろうことを確認して各自順番に風呂で現世の穢を清めてからパーティを始めることにして、先ず家主でない方の友人が浴室に入る。

家主と二人で宴会場の準備を整え、動画配信サービスの番組表から今日この日に相応しい番組を見繕う。そこへ頭にタオルを巻いた友人が風呂から出て来、交代で風呂に入るよう家主に言われ、その前にトイレを借りても良いかと尋ねると、
「鍵が掛かってるかもしれないから、もしそうだったら下のコンビニのトイレを借りてきて」
と奇妙な言葉が返ってきて首を傾げる。

建付でも悪いのだろうか。そうだとしても、一般的な家庭用の扉の鍵など十円玉でも使えば外から開けられるはずだ。脳裏に疑問符を浮かべつつ手を掛けたノブは問題なく回り、そのまま用を足して風呂に入ると疑念はすっかり忘れてしまった。

家主が風呂に入る間に二人で髪を乾かし、出てきた彼女と乾杯をしてB級ホラーの視聴を開始する。クリスマスはホラーに限る。

持ち寄ったワインやらケーキやらをやっつけながら一時間ばかり経った頃、友人がトイレに行くから再生を一時停止してくれと申し出る。リモート・コントローラのポーズ・ボタンを押した家主は先程と同様、鍵が掛かっていたらコンビニへと言って送り出し、特に意味もないが卓に残った二人して友人の背中を見送る。

すると、
「あ、あれ?」
と友人が上擦った声を上げ、これは鍵が掛かっているのかと、ノブを軽く揺すってみせる。その手元のノブはほんの数度だけしか押し下げることが出来ない様子でカタカタと軽い音を立てている。
「ああ、うん、ごめんね。私のベンチ・コート貸してあげるから」
と家主が立ち上がって廊下に掛けられたコートを渡し、友人が部屋を出る。戻ってきた家主に、
「外からでもコインか何かで開けられると思うけど、それじゃ駄目なの?」
と尋ねると、
「引っ越してきて直ぐに一度それをやったんだけど、中にコレが出たのよね」
と、胸の前で両手をだらりと下げて見せる。
「長いストレートの茶髪の女の人でさ、後ろ姿だけなんだけど、タンクの上の水でてを洗ってた」。
そういいながら卓へ戻ると、彼女は輪切りにしたバウム・クーヒェンの一切れを齧った。

そんな夢を見た。