第百十九夜
向こう一週間の食料の詰まった買い物袋を両手に提げ、近所の公園の横の歩道を歩いている。公園との境は背の低いツツジの生け垣になっており、まだ寒々と茶色い枝や幹を晒している。
その植え込み向こうの芝生の陽溜まりに、野良にしては毛並みの良い三毛猫が座っている。その脇にしゃがみ込む白いワンピース姿の少女が長い尾を撫でると、ぴょこぴょこと左右に振って躱す。親猫が仔猫の遊び相手をしているような様子に、歩きながら頬が緩む。
人に餌を貰って馴れているのか、それとも少女と顔見知りで彼女だけが特別なのかと思いながら、彼女達の脇へ通りかかる。と、三毛猫は大きな目を丸くして飛び起き、深い茂みの中へ逃げ込んでしまった。
思わず立ち止まり逃げる先を目で追ってから、邪魔をして申し訳ないと少女に謝ろうとするが、陽溜まりには誰もいない。猫を目で追っていたと言っても、子供が間近で動いて気付かぬとは思えない。
狐に抓まれたような気持ちで再び家路に就くと、冷たい風が頬を刺して首をすくめる。
この寒空に、なぜ少女は上着も無しに公園に居たのだろうか。
そんな夢を見た。
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