第二百十四夜   公園に着いてベンチを覗くと、ストレッチをする同僚達の姿が見える。名前を呼ばれ、片手を上げて走り寄ると、今日集まる予定のある中で最後だというので、慌ててジャージを脱ぎ準備運動を始める。 会社の同 […]
第二百十二夜   珍しく定時に職場を出て帰宅し、鞄からキィ・ケースを取り出していると、家の中からジリリリリと、けたたましい金属音がする。火災報知器の類の、金属の皿を短い間隔で叩くようなベルの音で、玄関から入って […]
第二百十一夜   正月最初の週末の夜道はいつもに増して人気が無い。新年会からの帰途を独り歩く私の酒に火照った頬や首筋を、空気が冷たく撫でる。 暫し歩いてアパートの入口へ着くと自動販売機でスポーツ・ドリンクを買い […]
第二百十夜   大人達が年を越しても酒盛りを続ける居間から廊下を挟んだ客間に、独り布団を敷いて横になっている。枕の変わると寝付けぬ質で、それでもどうにかうつらうつらし始めたとき、瞼の向こうがぱっと明るくなった。 […]
第二百九夜   仕事柄、初売りの三ヶ日は寝食の暇もない。それでも三年目となると要領が掴めているので、大掃除や衣食の用意を前倒しにすることで少しでも本番に余裕を持たせる策を講じられるようになった。 それでも天候の […]
第二百八夜   クリスマスの晩だというのに夜番で、詰め所に先輩と男二人で暇を持て余していた。 泥氏だってクリスマスくらいは仕事を休みそうなものだが、先輩に言わせると案外そうでもないそうだ。いくら仕事熱心でも泥棒 […]
第二百七夜   雪の降る前に、今年最後の山登りをしようと出掛けてドジを踏んだ。斜面を大きく滑落して腰を打ち、谷の小川の岸で身動きが取れない。万一を考えて数日分の食料と寝袋とは用意してあるが、登山道から大きく外れ […]
第二百六夜   明朝の会議で配布する資料を作り終え、手元に印刷した書類をコピー機にセットして給湯室へ向かう。事務所に独り居残るときは暖房を付けずに厚着で誤魔化すのが昔からの癖になっているので、複写を待ちながら冷 […]
第二百五夜   ドリンク・バーから食後の珈琲を手に窓際の席へ戻ると、頬杖を突いた友人が窓外の冷たく澄んだ青空を見上げながら、カゲウツシをやったことはあるかと尋ねる。 何のことか見当も付かぬと首を振る私を振り返っ […]
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